さらには、ものごとの根底にある構造を見抜き、その構造から世界を理解し、目の前の見えない現象を推測することを可能にする。つまり、現象をその根底にあるシステムから理解する能力だとも言える。
自閉症研究の世界的な第一人者の一人であるバロン=コーエンは、人間の脳には、共感(empathy)を得意とするEタイプと、システム(system)思考を得意とするSタイプがあり、自閉症は極端なSタイプで、共感が極度に苦手であると考えた。
コーエンによると、ルールや同一性へのこだわりも、システムで考えるのを好み、同じ規則を求めようとするためだということになる。
システム思考を好み、ものごとを一つのルールや法則で理解したがる傾向は、グレーゾーンから健常レベルの人に至るまで、Sタイプに属する人たちの重要な特徴と言えるだろう。
Sタイプのジェフ・ベゾスが
祖母を泣かせた言葉
アマゾンの創業者であるジェフ・ベゾスは、いまや世界一のビリオネアだが、その生い立ちは、波乱に富んだものだった。
じつの父親はサーカスの団員で、一輪車乗りを得意技としていた。高校時代の後輩で、まだ16歳だった女性とつき合う仲になり、妊娠して生まれたのがベゾスだった。
しかし、父親の仕事は不安定で、二人とも家庭をもつには若すぎたと言える。結局、2年で離婚し、母親は別の男性と再婚。ジェフはその男性の養子として育てられることになる。養父となった男性はキューバからの政治難民だったが、奨学金とアルバイトで大学も出て、大手の石油会社に勤めはじめていた。一方、じつの父親との連絡はその後途絶えてしまう。
何かに熱中するとほかのことが目に入らなくなる傾向は、幼稚園児だったころから顕著だったようだ。
公園の池に浮かんだ足こぎのボートに乗ったときも、ほかの子は母親に手を振っていたのに、ベゾスは、ボートが動く仕組みを知ろうと、そちらに夢中で、母親のほうなど一顧だにしなかった。何かをやり出すと、やめさせて次のことに切り換えさせるのが至難の業で、仕方なく幼稚園の先生は、椅子ごと彼を移動させていたという。
そんな彼は、宇宙飛行士と発明家になることを夢見るメカ好きの少年に育っていく。
ジェフ少年は、あるとき祖母を泣かせてしまったことがあった。喫煙による死亡率の上昇に警鐘を鳴らす公共広告を見ていたジェフは、自分で計算して、喫煙している祖母の寿命が9年短くなるという答えを導き出し、それを祖母に告げたのだ。祖母は泣き出したが、無理もなかった。祖母は肺ガンにかかってもう何年も闘病中だったのだ。