リモートワーク時代にこそ必要な
「公正さ」と「仲間意識」
働きがいを継続的に高めている会社とそうでない会社の違いは、ミッション・ビジョン・バリューを経営層自らの言動で体現できているか、組織として新しい取り組みや改善への挑戦を称賛する機会を持てているかだった。
また、2022年版と2023年版の2カ年連続で参加した会社のうち、働きやすさが改善したポイントは「公正さ」だ。前年と比較して、「性的指向に関係なく正当に扱われているか」「報酬に対する納得感が高い」「能力開発の機会が与えられている」など、男女差が生まれやすい設問のスコアで全体的に改善した。多様性、公平性、帰属意識を高める「ダイバーシティ、エクイティ&インクルージョン(DE&I)」が少しずつ推進されていることが示唆された。
拡大画像表示
一方で、前年からスコアが低下した設問として、「この会社の雇用は守られている」「特別なことがあれば祝い合っている」「この会社は地域・社会に貢献している」といった項目で、わずかに低下が見られた。
拡大画像表示
出社、リモートワークという働き方による、働きがいの差はあるのか。
コロナ禍でのリモートワーク実施状況は、出社と組み合わせたハイブリッド型を選択した会社が全体の6割。「出社していた人は20%未満」「ほとんど出社していなかった」では、「安全な労働環境があり休暇も取りやすい」「性別や人種に関係なく扱われる」「入社した人を歓迎する雰囲気がある」といったスコアが共通して高くなった。反対に「ほぼ全員出社していた」でも、「性別や人種に関係なく扱われる」「入社した人を歓迎する雰囲気がある」というスコアが上位で、加えて「雇用の安定」「責任のある仕事を任される」といったスコアも高い。
リモートワーク実施度合いにかかわらず、働きがいの高い職場では、共通して公正さや仲間を大切にする文化がスコアに反映された。
拡大画像表示
一方、リモートワークの実施率別で働きがいのスコアが最も低かったのは、「出社していた人は50%程度」だった。
GPTWジャパンの荒川陽子代表によれば、「出社率のルールが厳格化されたことで、社員が十分納得していない、もしくはリモートワーク対象者が一部の社員に限定されているといったことが、スコアの低い会社で起きていたと想定される」という。
働きがいが高い他の会社と比較すると、出社率50%程度の会社は、報酬への納得感や利益の公正な分配、誰にでも特別に認められる機会といった公正さに関わるスコアが低い傾向にあった。
以上の結果から、コロナ禍で直接話す機会が減った中で、出社、リモートワークのいずれを選ぶにしても、人事制度(賃金・評価)や称賛の機会において公正に扱われること、また職場の同僚との仲間意識が持てることが働きがいの向上において重要だと分かる。
なお、働きがいは新卒採用にも影響を及ぼす。「ランキング上位にランクインしていたから興味を持ち、エントリーした」という学生の反応が増え、対前年比で新卒応募者が増加したという会社もある。
上位ランクインを目指す努力の過程で、自社の経営戦略や人事戦略を見直すことが働きがいの高さにつながり、新卒採用でも有利に働くようだ。