解熱剤を早めに飲むと
病気が長引いてしまう
一方で、早めに解熱剤を飲むこともまた悪影響を及ぼす。
「体温が高いほうが良いときに、たとえば解熱剤によって体温を強制的に低くしてしまうと、まだウイルスが活発に増殖しているのに、体の免疫力を弱めてしまう可能性もあります。そうすると一時的に熱は下がったとしても、病気を長引かせてしまうことになりかねません」(同前)
それを裏付ける研究はいくつかある。60人の健康なボランティアの鼻腔内にライノウイルスを感染させ、解熱剤(アスピリンとアセトアミノフェン、イブプロフェン)とプラセボ(偽薬)の4つの治療群のいずれかに割り当てたところ、解熱剤投与群はプラセボ群と比較して中和抗体(ウイルスを失活させる作用のある抗体)の抑制が確認された。ほかにも解熱剤を投与すると炎症反応が強まったという報告もある。
国内では京都大学保健管理センターが貴重な研究を行っている(2007年、「Internal Medicine」に掲載)。全国23施設の協力を得て、風邪を発症して2日以内の患者を対象に、ロキソプロフェンを含む抗炎症薬(解熱剤)か、プラセボ(偽薬)を服薬してもらい、治癒までの日数を観察したのだ。
その結果、「解熱剤を使ったグループ」のほうが発症後3日目までの重い症状は少なく、日常生活に制限があった期間が短くなった。ところが、「解熱剤を使わなかったグループ」は、4日目以降になると感染者の割合が少なくなったのだ。全ての症状が消えるまでの期間も解熱剤を使ったグループが8.9日だったのに対し、プラセボグループは8.4日と半日短い。
解熱剤は高熱のために食事も取れないようなとき、どうしても仕事をしなければいけないから一時的に熱を下げたいときの服用にとどめたい。「なんとなく調子が悪いから」と、市販の風邪薬を服用するのが最悪のパターンだ。そこには大抵、解熱鎮痛成分が入っているのだから、かえって治りが遅くなる。