厚労省も「乱用の恐れがある」と指定
「せき止めシロップ」に要注意

「せき止めシロップに注意が必要」と、と渡辺氏が言う。

「鎮静作用のあるコデインが含まれているものが多く、“多幸感が得られる”といわれていて依存しやすいのです」

 厚生労働省はコデインやエフェドリンなどの成分(表2)を含む医薬品を「乱用の恐れがある薬」に指定している。こうした薬を薬局などが販売する際は、原則1人1瓶とし、複数購入する場合は理由を尋ねることを医薬品医療機器等法の施行規則で義務付けている。しかし、厚労省の委託を受けた民間会社が昨年から今年にかけて全国の薬局やドラッグストア5000店とインターネットの販売サイト500件を調べたところ、店側が理由などを確認せずに複数販売したケースが半数を占めた。

「乱用が続けば肝臓や腎臓に悪影響を及ぼし、最悪死に至るケースもあります」と渡辺氏。若い頃に乱用の恐れのある薬を多用すると、将来覚醒剤や大麻などの薬物乱用にもつながりやすいという。最近はオーバードーズといって、市販薬を過量に服用して死亡した報道もある。

 子どもや孫が服薬する際には目を光らせるとともに、自ら市販薬を使用するときにはこれらの成分が含まれていないか確認し、含まれている場合はくれぐれも使用量を守ること。

5年間で1200件の副作用報告
そのうち15人が死亡

 薬局で気軽に購入できる市販薬は、病院で処方される薬に比べれば副作用の出る頻度が低い。しかし消費者庁の発表によると、2009年から13年度までの5年間に1200症例を超える副作用報告があり、このうち15人が死亡したとされる。死亡例のうち8例が風邪薬で、3例は解熱鎮痛剤によるものだった。

 たとえばロキソプロフェンやアセトアミノフェンを含む風邪薬や解熱剤、痛み止めを服用する際は、風邪と似た症状の「スティーブンス・ジョンソン症候群」の副作用がまれだが起こることがある。初期症状は「目やにやまぶたの腫れ、目が開けづらい、目の充血」など目に異常が現れたり、発熱や唇のただれなどがある。その段階で服薬をやめ、至急医療機関の受診を。症状が進行し、失明や死に至った事例が国内で起きている。

 堀氏から「市販薬は軽くて安全ということはない」というコメントがあったがその通りだ。ある年に突然花粉症になってしまうことがあるように、たとえいつも飲んでいた薬でも、突然思わぬアレルギーなどの副作用が出現することもある。入院するような重大な副作用に陥ったときのため、薬を購入したレシートを保管しておきたい。医師に副作用と診断されれば、医薬品副作用被害救済制度が利用できる。薬の外箱に購入レシートを貼っておき、いざというときに薬局に持っていけば必要な販売証明書を発行してくれる。

 今後政府は、風邪薬や花粉症治療薬など市販薬で代替が可能な処方薬を保険から外していく方向で調整している。これからは軽度な不調に対して、市販薬を購入するという機会が増えるだろう。薬を選ぶ目を培い、服用後の“体の声を聞く”習慣を忘れてはならない。