お客さまが見えなければ
プロダクトの価値は存在しないのと同じ

 では、お客さまに自社のプロダクトに価値を見いだしてもらうためには、どうしたらいいでしょうか?

 まずは、そのプロダクトを買ってくれている、もしくは利用してくれているお客さまが、そのプロダクトにどんな便益と独自性を見いだしているのかを知ることです。「価値を見いだしてくれたお客さまはどんな人で」「なぜ価値を見いだしてくれたのか」ということを探ります。つまり、「お客さまの特徴(WHO)とプロダクトの便益と独自性(WHAT)の組み合わせ」を同時に見つけだすということです。

 それがわかったら、同様にその価値を感じてくれそうな潜在的なお客さまを探しだし、便益と独自性を伝えます。また、お客さまがほかのプロダクトに心変わりしないよう、便益と独自性を高め続けることも忘れてはいけません。

 お客さまに便益と独自性を伝え、プロダクトの便益と独自性を高め続ける。それらをひと言で表すと「価値づくり」です。つまり、マーケティングとは、お客さま(WHO)とプロダクト(WHAT)の間の「価値づくり」ともいえるのです。

プロダクトの価値を知らなければ
当然伝えられない

 世の中には自社のプロダクトの便益と独自性の可能性を自分たちで把握できていない企業も少なくありません。しかし、売っている側が自らのプロダクトの便益と独自性を認識していなければ、潜在的なお客さまにプロダクトの価値を見いだしていただくことはできないのです。

 私は、よく「うちの商品、こんなにいい商品なのになぜか売れないんです。どうやって売ったらいいですかね?」といった相談を受けることがあります。その商品が売れない理由には、次の2つが考えられます。

(1)価値をつくり得る便益と独自性を、それを必要とするお客さまに伝えきれていない
(2)自分たちが信じて伝えている便益と独自性に、お客さまが価値を見いだしていない

 まず(1)について、その商品がどんな便益と独自性を提供し得るかは、「お客さまはどんな人か」「どんな便益と独自性に価値を感じてくれているのか」ということがわかってはじめて見えてくるものです。そのため、潜在的なお客さまにプロダクトの価値を届けられていないという事態は多く見受けられます。

(2)は、自分たちは自社商品に便益や独自性があると思っているけれども、お客さまから見る限り、それほど強い価値や他社商品との差があるようには見えないというパターンです。これもよく見られます。