2009年9月、NTTドコモ、KDDI、沖縄セルラー、ソフトバンクモバイル、イー・モバイルの5社が、3G携帯電話でのSMS相互乗り入れサービスの実現に向けて検討を進めていくことで合意したと発表した。

 SMSとは「ショート・メッセージ・サービス」の略。これは、電話番号を宛先に用いて送信するメッセージサービス。文字数の制限などはあるが、安価でメッセージを送受信できるのが特徴だ。ただし、現時点では同一キャリア同士の携帯電話でしか使用できない。そのため、キャリアを越えて利用できるEメールサービスのほうがよく使われていることだろう。SMSをオープンにすると、利用者にとってはどのようなメリットがあるのだろうか。

 まずひとつめが、相手のメールアドレスが不明でも電話番号さえわかっていればメッセージを送信できる点だ。ふたつめが、使い分けを気にしなくてもよいということ。これまでは同じキャリアの携帯電話にはSMSで、他社の携帯電話にはEメールで……というように使い分けていた場合でも、SMSだけでOKということになり、使い分けをせずに済む。最後は、ナンバーポータビリティ(MNP)でキャリアを変更してもSMSで連絡が取れるという点。これまではキャリアが変わるとEメールアドレスのドメインが変わるため、友人などに「メールアドレスが変わったよ」とお知らせをする必要があった。しかしSMSの相互乗り入れが実現すると、この通知もあまり必要性がなくなるというわけだ。

 一方、実現に関していくつか気になることもある。一番懸念されるのが、電話番号で手軽にメッセージが送信できてしまうため迷惑メールの類が増加するのではないかということ。そして、各社間の制限および料金体系の統一だ。現在、文字数の上限と料金が各社ばらばら。特に料金は、送信1通につき0円、3.15円、5.25円と差があるため、このあたりは各社間で話し合いの上、ユーザーに優しい料金設定にしてほしいところだ。

 このSMSの相互乗り入れは、ユーザーだけでなくキャリア側にもメリットがある。それは、メールアドレスを気にすることがなくなるため、MNPのハードルが下がり、市場の活性化に繋がるというものだ。要は各社ともに、ほかのキャリアから自分の会社に乗り換えやすい状況が作れるということ。これまで囲い込みによりキャリアを確保してきた携帯電話だが、MNPやSMS相互乗り入れサービスにより、どのキャリアに変更してもユーザーに負担がかからないような仕組みにシフトしているといえる。つまり、新規ユーザー獲得から、他社ユーザーの乗り換えを期待するフェーズになっているということなのだろう。

(三浦 一紀)