ダイバーシティは
生え抜き比率低下も目標に

 よって、これからの時代に、現在のグループ1が主役で基本的な運営をコントロールし、グループ2が助っ人というモデルはかなり苦しいと言わざるを得ない。

 多様な戦略を知り、多様な人材を知り、多様な組織運営の仕方を知り、多様な組み合わせ方を知っている人が、多様な人の知見を十分に活用しながら、自社の得意パターンと巧みに接続していくことが必要となる。

 その際には、グループ2の人材はすでに単なる助っ人ではなく、またグループ1も無条件に主役ではなく、1も2も区別なく主役となり、互いに最適な組み合わせを作って対応する多様性の高い組織を作っていかなければ大変化に対応できない。

 そのためには、グループ2もグループ1とともに組織の主役であることを明確に示す必要がある。そのもっとも明確な方法が、社長を決定する際の選定基準である。“社長は他社経験なしだとなれない”を選定基準にすれば、もっともわかりやすい会社の意思の表明となろう。

 個人的には、最低2社の幹部経験があるくらいでないと、多様な知見を組み合わせていくうえで必要な経験を積めないのではないかと考えるが、それだと誰も候補者がいないかもしれない。せめて、他社を1社は経験し、かつ自社の海外現地法人のトップの経験があるくらいを最低条件としたい。

 あわせて、役員の構成員の生え抜き比率を大幅に下げる目標設定をすることも必要になるだろう。現在はダイバーシティの観点から役員の男女比だけがクローズアップされているが、むしろ、生え抜き比率を下げることによるダイバーシティのほうが、経営の成果に直結すると思われる(欧米のグローバル企業にそんな目標はないが、そもそも生え抜きの比率が低いから当然である)。

 現在進んでいる社長の若返りも良いとは思うが、同じDNAでただ年齢が若い個体よりも、かつて違う世界に生存した別のDNAを社内に本格的に取り込み、会社のDNAそのものを変異させていくほうが、大変革の時代の生存戦略としてはよほど可能性が高いだろう。

 もちろん、なかには良質ではないDNAが入ってくるかもしれないが、ホモジニアスな(同質性の高い)組織よりはよほどましだ。

(プリンシプル・コンサルティング・グループ株式会社 代表取締役 秋山 進、構成/ライター 奥田由意)