もうひとつ、保護者のアドバイスが生きる場面があります。内定をもらえる学生ともらえない学生の違いは、実は最初の選択肢の広さに違いがあることが多いです。苦戦する人は決め打ちで、「やりたいこと」ができる会社だけを狙って受けては落ちることを繰り返すことが多いです。ようやく、企業の候補を広げたときには、すでにどの企業も採用活動が終わっていて選択肢がなくなっているという、負のスパイラルに陥りがちです。最初は「間口を広く」が鉄則です。

 子どもの人となりをよく知っている保護者は、社会人の先輩としてアドバイスできる利点があります。そうしたアドバイスは大変心強いものです。たとえば、子どもが未知のことに挑戦する姿勢は大事ですが、「やりたい仕事や会社だけでなく、自分の志向にも合うし、自分の得意なことも活かせるという観点で少し選択肢を広げてみるといいのでは」と伝えると、納得感を持って間口を広げられるかもしれません。

 ちなみにインターンシップは、自己分析における「やりたいこと」「得意なこと」を試せる場でもあります。企業がどういう雰囲気、環境なのかを知り、自分の得意なことがそこで活かせるか、やりたいことができるかを試す経験を積むわけです。もちろん以前お話したとおり、インターンシップを経て内定を獲得できる学生は内定獲得する学生全体の3割程度なので、インターンシップに参加できなければその企業に就職できないというわけではありません。

子どもの自己肯定感を
担保する勇気の言葉

 なかなか内定が取れないという期間が長引くと、どんなにメンタルが強い人でもさすがにこたえるものです。人は、「働くために生きる」のではなくて、「より自分らしく生きるために働く」のだと思います。就活のGOALは「内定獲得」ではなく、「自分らしく人生を謳歌する」ための仕事や職場を選ぶことです。不合格になったとしても、人間性を否定されたわけではなく、単にその企業とは縁がなかっただけ。きっと相思相愛の相手に巡り合える。本当に自分に合うベストな1社を探しにいきなさい」と勇気づけ、お子さまの自己肯定感を担保してあげてください。

 励まし、支え、子どもが納得感のある選択をすることがいかに肝要かということが、おわかりいただけたかと思います。

(リクルート 就職みらい研究所 所長 栗田貴祥、まとめ/ライター 奥田由意)