メンバーの得意分野を早く見極めるには

 当のスクラムの“中の人”は、どう感じているのだろう。

 JPデジタルの若手メンバーを中心に組成された「社内改善スクラム」は、社内の火種を改善していくプロジェクトだ。改善リストは50件を超え、やるべきことは山積みだ。同スクラムのメンバーである中川貴登さんは、「飯田さんの采配はすごい」と語る。

Ballista 代表の中川貴登さんJPデジタルの「社内改善スクラム」などで活動するBallista 代表の中川貴登さん。JPデジタルには、スタートアップからも多様なスペシャリストが集結していて、中川さんもその一人 Photo by M.S.

「飯田さんはひとりひとりの“とんがり”を育てることに、ものすごく長けていると思います。スクラムが変わった瞬間、人が変わったように目を輝かせてぐんぐんスキルを伸ばしたり、短期間でスクラムを回すくらいに成長したり、人が進化していく姿をこれでもかというほど見せつけられてきました。これができるのは、飯田さんがメンバーをよく見ているからだと思います」(中川さん)

 早く見極めるには、メンバーひとりひとりと向き合う必要がある。

「見極めってすごく難しいですよね。修行のようなもので、人にはそれぞれ『向いていなくても経験することで大きな成長につながる』というタイミングがあるからです。でも、いつか『これ以上続けても、本人のためにも組織のためにもならない』という時が来ます。こうした兆候を見逃さないようにすることが重要です」(飯田さん)

 飯田さんは、3~6カ月に1回のペースで全社員と1on1(ワンオンワン)ミーティングをしている。「とにかくメンバーのことをもっとよく知りたい」のだそうだ。

 社員と向き合うとき、飯田さんは必ず手書きでメモを取るという。前回の1on1と比較して、メンバーの変化を見逃さないようにするためだ。対話に加え、静かに観察することも大事だという。飯田さんは散歩のふりをしてオフィスを歩き回る。この日も、テレワークから久しぶりに出社したメンバーを見かけると、手を振って声を掛けていた。