岸田首相Photo:JIJI

昨年の出生数は80万人を割り、過去最少となった。岸田文雄首相や、小池百合子都知事が打ち出す少子化対策は奏功するのか。日本の少子化対策の盲点と、「少子化になっても大丈夫」な方法を解説する。(ジャーナリスト 池上 彰、増田ユリヤ 構成/梶原麻衣子)

「異次元の少子化対策」
他国はやっている

増田 岸田文雄首相が打ち出した「異次元の少子化対策」。年頭の記者会見で言及し、国会でも議論になるなど大きな話題になっています。

池上 大事なのは施策の中身が「異次元」と呼べるものなのかどうかですが、現状では所得制限撤廃を含む児童手当の大幅な拡大、学童保育・産後ケアの充実、育休制度の拡充などといわれています。

増田 国会では少子化対策として「N分N乗方式」も急に叫ばれだした印象です。

池上 「N分N乗方式」は、1946年にフランスで導入され、出生率引き上げに一定の効果があったとされる制度のことです。所得税を個人単位ではなく世帯単位で計算し、世帯の人数の合計をNとして(フランスの場合、大人は1、子どもは2人目まで0.5)、親の収入の合算をNで割って所得税を計算します。つまり子どもの数が多いほど、負担が軽減される仕組みです。自民党の茂木敏充幹事長が提案し、国民民主党や日本維新の会も政府へ導入を求めています。

増田 東京都の小池百合子知事も「所得制限なしで、18歳までの子どもに毎月5000円の給付を検討する」と発表しました。

池上 確かに、既に子どもがいる人にとっては給付を受けられるに越したことはないでしょうが、今子どもがいない人が「月5000円もらえるから子どもを産もう」となるか。でも増田さん、世界にはまさに「異次元」の少子化対策を打っている国もあるんですよね。