人工的に幸福感をつくるシステム

●幸せは脳内でつくるものである

 幸せは偶然もたらされるものでも、自分が勝ち取るものでもなく、脳内で「つくるもの」であるということが実験と研究によって明らかになっています。

 年収が高くなるとたしかに幸福度は一瞬上がるのですが、すぐに慣れてしまい、幸福度は下がってしまいます。これを「順応仮説」といいます。また、私たちは何かを選択した後に、選択の変更ができたり、さらに改善できる場合、欲をもってさらによいものを追い求める脳の働きがあります。その結果、人は幸福度を下げてしまうのです。さらに、年収が増える分だけ困難な人間関係や仕事が増えていくものです。

●人工的に幸福感をつくるシステム

 一方で、自分の選択が変更不可能な場合、人は人工的な幸福感を無意識につくり出すことがわかっています。このつくり出された幸福感は、成功の代替え品として生まれたものですから、本当に成功して手に入れたものより劣ると考えられていました。

 ところが、まったくそんなことはないのです。成功して手に入れたときに生じる幸福感と何も変わらないか、むしろ高くなることもあります。

 これは「防衛機制」という自分の心を守る機能のひとつで「合理化」と呼ばれています。現状の自分でよかったと考えるものなのです。

行動経済学で幸福感を上げる

 では行動経済学を使って、幸福感を上げる方法を考えていきましょう。

(1)所得を上げる

 低所得は幸福感を抱きにくく、所得を上げていくことが大事です。ただし、幸福感は所得の一定ラインを超えると、比例しては上がらなくなりますから、所得だけにこだわらないことが重要です。

 会社員なら転職をする方法があります。転職で年収が上がる例は、その会社に自分と同じ経験や技術をもった人がいない場合です。自分の経験や技術を求めている会社への転職、そのために技術や経験を磨くことが大事です。

 特定の才能に秀でた人は、他の能力も高いと評価される傾向があります。これを「ハロー効果」といいます。起業や副業でもハロー効果は強い効果を演出します。