実際、厚生労働省が行った調査結果でも、発達障害児が増えていることがわかります。2006年の時点では、発達障害の児童数は約7000人でしたが、2019年には7万人を、2020年には9万人を超えているのです。途中から調査対象が広がったことを踏まえても、数字だけ見ると13年(2006~2019年)で10倍に増えていることになります。

 しかし、現実に学校などから「発達障害では?」と指摘されて、私のところに相談にくる事例の中には、医学的には発達障害の診断がつかない例も数多く含まれているのです。

 私はそのような例を「発達障害もどき」と呼んでいます。

 発達障害もどきとは何かを大まかにお伝えすると、「発達障害の診断がつかないのに、発達障害と見分けのつかない症候を示している状態」を指します。これは、私が診療を通して出会った子どもたちの症候を見る中でつくった言葉で、そういった診断名があるわけではないことを、ご注意ください。

発達障害もどきの3つのカテゴリーとは

1.診断はつけられないが、発達障害の症候を見せるもの

 落ち着きがない、集団生活に適応できない、衝動性が高いなど、発達障害と類似した症候があり、相談に来られる親子は多くいますが、必ずしも全員に発達障害の診断をつけられるわけではありません。

 発達障害は「先天的な脳の機能障害」と定義されるため、診断のためには「生まれたときからの生育歴」を聞き、それを診断基準に照らし合わせる必要があるのですが、生育歴にまったく問題はなくてもあたかも「発達障害のような」行動が見られる子どもがいます。

 これこそまさに、発達障害もどきといえます。特に小学校入学前までの幼児期に多く見られます。