
インターネットを通じて少額から不動産投資に参加できる不動産クラウドファンディング市場が拡大している。2023年には業界団体の不動産クラウドファンディング協会が発足し、「利回りくん」などを運営する業界大手シーラテクノロジーズ創業者、杉本宏之会長が理事に就いた。働く世代を中心に多額の資金を集める一方、一部で償還遅延やポンジスキーム疑惑も取り沙汰される不動産クラウドファンディング。緊急特集『ソーシャルレンディング 闇の紳士録』の#6で、その現状や課題について杉本氏に聞いた。(フリーライター 村上 力、ダイヤモンド編集部副編集長 重石岳史)
資産形成層の運用が拡大中
不動産クラウドファンディングとは?
――不動産クラウドファンディングとは何ですか。
1口1万円から不動産投資ができる投資サービスです。個人や企業が不動産投資をする場合、通常は商業ビルやマンション一棟、もしくは住宅一戸を買って家賃収入を得るわけですが、物件を買うには数千万~数億円のまとまった金額が必要です。しかし不動産クラウドファンディングなら、われわれが提案する投資先の中から、好きな物件に好きな金額を投資することができるのです。
具体的には、われわれのような事業者がさまざまな不動産投資案件を発掘し、ウェブサイトで投資家に利回りを提示して投資を提案します。それによって集めたお金で対象不動産を取得し、家賃収入を原資として利回りを分配するイメージです。他に投資家から集めたお金を不動産開発に投資し、不動産売却により得られた収益を分配する開発型ファンドもあります。
――不動産を小口化し、投資家に買ってもらう仕組みは不動産投資信託(REIT)と同じです。あえて不動産クラウドファンディングを使う利点は何ですか。
端的に言うと、不動産クラウドファンディングはREITのデジタルバージョンと考えていただければいい。インターネットで簡単に、今すぐ始められる“ミニREIT”といえますが、本質的にはREITと変わりません。
では不動産クラウドファンディングを勧める理由は何かというと、ユーザーインターフェース(UI)・ユーザーエクスペリエンス(UX)にあります。よりお客さまが使いやすくするために、7歳児でも70歳の方でも5分で登録して利用できるように工夫しています。
もちろん投資をする上で重要な部分は絶対に省略しませんが、分かりやすく簡潔に、何に投資するのか、どんな不動産なのかを理解してもらい、できれば5分以内に全てが完結することを目指しています。REITだと証券口座を作って審査を受け、自宅にはがきが届くなど煩雑な手続きがあり、投資を始めるまでに3日はかかってしまうわけです。
REITは何十物件という不動産の束を小口化した商品なので、自分の投資口がどのような物件で構成されているのかが分かりにくい。一方、不動産クラウドファンディングは、個別の物件に対して投資を集めるので個別性が高く、どういった物件に投資しているのか分かりやすいメリットがあります。
またREITの場合は金融庁が監督官庁となりますが、不動産クラウドファンディングは不動産特定共同事業法が根拠法となり、監督官庁は国土交通省となります。
杉本氏は、分かりやすさや使いやすさが不動産クラウドファンディングの利点だと強調する。一方で不動産クラウドファンディングには、運用実態がないにもかかわらず新規投資家から集めた金を既存の投資家に支払うポンジスキームや、価値のない土地をだまして売りつける原野商法が疑われる事例もある。そうした業界の疑惑について、杉本氏に単刀直入に聞いた。