福島第一原発では
国の基準の40分の1の濃度に
NHK「原発特設サイト」(2021年3月)には、こうある。
〈放射性物質の性質に詳しく国の小委員会の委員をつとめた茨城大学の田内広教授は、「(中略)細胞への影響を見ているが基準以下の低濃度では細胞への影響はこれまで確認されていない」〉
日本のトリチウム排水基準は、1リットル当たり6万ベクレルだが、世界保健機関(WHO)の飲料水基準ガイドラインは1万ベクレルで、福島第一原発では1リットル当たり1500ベクレル以下の濃度にしてあるため、国の基準の40分の1の濃度となっている。
いよいよ処理水放出へ
タイムリミットが差し迫っている
福島第一原発では、1日140トンのペースで処理水が発生している。「トン」と言われてイメージが湧かないかもしれないが、1トンとは、1m×1m×1mの水の重さだ。人間の体重で換算すると約17人。これが毎日140個(人間の体重では約2380人分)、排出されていく。
福島第一原発現地へ1月26日に取材視察した読売新聞(記事は2023年2月16日付)の報道によれば、「大型休憩所7階の窓から敷地内を見渡すと、南側一帯にはびっしりとタンクが並んでいた。処理水を保管するタンクだ。約1000基あり、現在約132万立方メートルが保管されている。タンク群の全容量は、137万立方メートルなので、96%が埋まっていることになる。1日140立方メートルの処理水が発生する計算で、今年夏から秋頃に満杯になる」という。
震災以来、地元福島にも、漁師にも、電力業界にも八方美人を繰り返し結論を先延ばしにしてきた政府・自民党だが、いよいよ処理水放出へタイムリミットが差し迫っているということだ。