処理水の海洋放出に対して
「韓国国民が憂慮」
これまで政府は、処理水の海洋放出をどうやって地元自治体や水産業者、消費者団体に説明するか、逃げ回っている印象を与え続けたのは、各種調査からも明らかだ。
NHKが福島県民(20歳以上の男女1200人・インターネット調査・2021年2月)を対象に行ったアンケートでは、「地元住民への説明や対話は十分だ」と思うかとの問いに、「そう思う」「どちらかと言えばそう思う」が合わせて14.2%、「そう思わない」「どちらかと言えばそう思わない」があわせて65.6%だった。政府の説明不足は明らかであろう。
政府と東電は、地元の漁業者の理解なしには処理水の海洋放出を実施しないと約束してきた。全国漁業協同組合連合会(全漁連)は2022年6月23日、「漁業者・国民への説明や風評被害への対応をはじめ実施すべき具体策が示されていない」と、反対する特別決議を全会一致で採択している。
日本の周辺国でも、処理水の海洋放出に対する懸念は、大きい。東京大学の関谷直也准教授が2021年3月に、日本のほか、韓国やアメリカなど10の国と地域ごとに、20代から60代の男女、300人を対象にインターネットで行った結果、
・同じ質問に対し、日本以外の9カ国・地域はいずれも6割を超え、高い順から韓国93%、中国87%、ドイツ82%、フランス77%、台湾76%、アメリカ74%と続いた
・韓国や中国などの日本の近隣諸国で「いまでも日本政府は原発からの放射性物質の情報を公開していない」などという回答も5割に上った
という。
2022年7月22日に、原子力規制委員会が処理水を海洋放出する東電の計画を認可したが、その際も、中国外務省は記者会見で「強く反対する」と表明。韓国外務省は「国民の憂慮を日本側に伝える」とコメントしている。
3月3日、政府関係者は、筆者に対して、「春までに海洋放出のための施設面での準備が整うことになる。もはや処理水を貯蔵するスペースに余裕はなく、梅雨明けには、処理水の海洋放出が行われる」と言明した。
そこで今後の政府対応について、復興副大臣である小島敏文衆議院議員を直撃した。