東北の農林水産品が
様変わりしている

――2011年3月11日の東日本大震災から長い歳月が流れました。被災地の状況はどうなっていますか。

 復興に当たって、インフラについてはほとんど整ってきた。さらに、福島国際研究教育機構(Fukushima Institute for Research, Education and Innovation、略称F-REI(エフレイ))を設立し、7年で1000億円程度の事業規模を想定しており、ドローンや先端農業、放射線医療の創薬などを研究することになっている。

 東北の「生業(なりわい)」について、すべてが順調だったわけではないが、被災地にはにぎわいを取り戻してきた部分がある。例えば、気候変動によって、サンマがあまり取れなくなってしまった。漁獲高は年間30万トンあったものが現在では3万トンになってしまった。サンマの大きさも以前よりも細身になってしまっているようだ。しかし、代わりに、フグ、タチウオ、ワタリガニといった中国地方で取れていたような水産品が取れるようになった。

特定復興再生拠点区域外の福島県大熊町を視察する小島敏文復興副大臣特定復興再生拠点区域外の福島県大熊町を視察する小島敏文復興副大臣(写真右)

 農産物については、東北のイチゴ、ハウスイチゴが世界的な評価を得られるようになっている。タイへの輸出が本格的に始まったところであり、今後は更に、仙台空港を使ってアメリカへの輸出なども宮城県・山元町などが中心になって進めているところだ。政府としても後押しできることはないかを考えているところだ。

 懸念しているのは、住民の孤独・孤立だ。岸田文雄首相からは、「被災者に寄り添ってくれ」と指示を受けていて、どうしたものかと住民に尋ねたところ、「とにかく(東北へ)きて、実態を見てくれ」と言われた。

――東北が見離されてしまうのではないかという疎外感が進んでいるのかもしれませんね。

 高齢化が進んでいることもあるが、住民一人ひとりの孤独、孤立が深まっていて、孤独死などが増えてしまっている。その中でも、女性はワイワイできる人が多いが、男性はプライドもあるのか、引きこもってしまう傾向にある。そこで、スカイプなどのパソコンのコミュニケーションツールを使って、人と会ったり、触れ合ったりできないかと働きかけているところだ。

 また、これまで特定復興再生拠点区域だけだった、「空き家の撤去」「除染」といった国費による実施についても、拠点区域外においても可能になる。被災地で起業しようとしている人、生活をしようとする人が一人でも増えるよう願っている。