Sさんの月間支出のうち
削れる項目は?
支出は今のまま変わらないとすれば年間562万円ですが、せっかくご相談をお寄せいただいたのですから、もしかすると節約への強い意思をお持ちなのかもしれません。そこで、56歳で退職するパターンでも、支出額は1割強を減額して年間500万円としましょう。
年間収入840万円、年間支出500万円ですから年間黒字額は340万円。全額貯蓄に回すとすれば56歳までの4年間で1360万円になりますが、息子さんの結婚祝い金を支払う可能性があるため、貯蓄額は100万円減額して1260万円とします。
現在の金融資産額5180万円に1260万円を加えると6440万円です。金融資産額が増加したので、老後の家計を安定させるために住宅ローンの残債を退職時に一括返済してしまいましょう。一括返済する月にもよりますが、56歳時点の住宅ローンの残額は2000万円を超えるか超えないか…といった程度だと思われます。今回は便宜上、一括返済後の金融資産額は4350万円とします。
その前提で、年金受給が始まる65歳までの家計収支を試算してみます。Sさんが働いているときの月間支出は年間500万円でした。退職時に住宅ローンを完済するため、そこから年間190万円強が減額となり、年間支出は310万円に落ち着きます。
ですが、本来はもっと退職後の支出を減らす余地があります。ご質問の(3)に先にお答えすると、Sさんが記載した支出項目のうち、通勤費を含む交通費1万5000円、交際費2万円、衣服/美容関連費3万円、通信費1万6000円、生命保険・がん保険・年金保険1万9000円、ふるさと納税2万円の半分程度はそれぞれ削ることができるはずです。
上記の項目を合計すると月間12万円なので、半分削ると月6万円。年間では72万円の減額になります。保険に関しては、すでに息子さんが独立されており、もしSさんに万が一のことがあっても経済的に困窮する可能性はあまりないと判断しました。ふるさと納税は節税の一環であり、必要不可欠ではないと考え減額しました。
年間支出310万円から、この72万円を差し引くと238万円です。ただ、Sさんは退職後に旅行や園芸を楽しみたいと希望されているので、臨時の出費も多少あるかと考え、退職後の支出は年間300万円とします。
56歳で退職してから公的年金の受給が始まる65歳までの8年間、年間収支は収入0円、支出300万円です。年間赤字額は300万円で、8年間の合計では2400万円です。住宅ローン完済後の金融資産額である4350万円から2400万円を差し引くと1950万円が残ります。これが65歳時点の金融資産額です。
相談文によると、56歳で退職した場合の年金受給額は14万円、年間168万円とのことです。その数字を使って65歳以降の家計収支を試算します。公的年金額の168万円はおそらく額面なので、手取り143万円とします。支出は年間300万円のまま変わらないとすると、年間赤字額は157万円です。
Sさんが65歳時点の金融資産額は1950万円ですから、年間157万円ずつ取り崩していくと、約12年後(Sさんが77歳頃)に金融資産は底を突くことになります。この状況では人生100年時代に対応できません。支出を大幅に削減した上で試算しましたが、残念ながら、56歳での退職も非現実的だと言わざるを得ません。