半年以上のつきあいのウメさんが亡くなり、こうした別れは日常茶飯事の私もうるっと来ました。一方、担当の看護師は晴れ晴れした表情をしています。彼女はすでにお別れのあいさつをウメさんとしていて、そのときたくさん泣いたそうです。事前にしっかりお別れのあいさつをしておくことは、家族だけではなく私たちスタッフにも大切なことだとあらためて感じました。

 一人暮らしを好み、最後まで自宅で生きたいと思っているお年寄りは大勢います。施設に入るのを拒否し、子どもたちに「一緒に暮らそう」と言われても、好んで一人暮らしを続けている人も少なくありません。高齢で生活スタイルを変えるのは、死ぬよりも怖いことなのです。

 ウメさんのようなお年寄りの望みを叶えるためにも、もっと在宅緩和ケアが広がる必要があると思います。数字やデータに表れない「人間の心」に寄り添うからこそ、私の在宅緩和ケアはAIで行なうことは不可能なのです。