これらの法則を踏まえた上で、親に寄り添った片付けができると良い。

「親に寄り添うなら、まずは“片付け=奇麗にすること”ではないという認識を持って。高齢の親のために行う片付けは、自宅で少しでも長く生活できるよう、安心・安全・健康に暮らせる片付けが目標です」

 こう話すのは、介護福祉士として介護の現場で働いた経験を持つ、片づけヘルパーの永井美穂さん。

取り出しやすい位置に収納する

 例えば、「床に置いてあるもの」は、単に散らかしているのではなく、親が「日頃からよく使っているもの」。そのため、「これをよく使っているのだな」と認識した上で、取り出しやすい場所、使いやすい場所に置くことが大切だ。床に置いてあるものを、単に見えないようにしまえば良いというわけではない。

「床に物があると、子ども世代は“あ~あ、こんなに散らかしちゃって”と片付けがちですが、親からしてみれば、しまうとわからなくなるから、床に置いているのです。あえて出しっぱなしにしているのと、だらしなく散らかしている状態とは別物であることを理解して」(永井さん)

 その上で、転倒防止のためにも、床に物を置かないように促す。転倒の主な原因には、床に置いてある物につまずく、床に積んである荷物が崩れて、それにつまずくなどがある。そのリスクを避けるためにも、床には極力、何も置かないこと。床に置いてある物を親に確認しながら片付けると、日頃から何をよく使っているのか知ることができる。

「転倒して骨折し、入院すると筋肉が弱って、寝たきりになってしまう可能性もあります。特にマットなどの段差につまずいたり、滑ったりして転倒してしまう可能性もあるので、滑りやすいマットは敷かないほうがいい」(同)

 収納も、高齢者には身体に負担がかからない場所を考える。ポイントは「高低」と「動線」だ。まずは、椅子などに乗らないと取れない天袋への収納や、しゃがまないと取れない場所への収納はやめること。日常的に使うものや使用頻度の高いものは、目の高さから腰の高さまでの取り出しやすい適度な高さに置く。