教育は一応用意していても炎上だらけ
筆者が実感した「啓蒙動画」の効果

 国が作る動画というのは、みんな知っての通り、やや、やぼったい。やぼったさに若干冷める気持ちをなだめながら、「その動画で扱っているテーマをくみ取ろう」とこちらから歩み寄る姿勢を持つことで、やっとイーブンに見ることができるくらいのものである。

ただ、各動画の主張自体は普遍性と正当性があり、学ぶところが多い。そこで、「お国の動画を最大限生かす方法」として、実体験をもとに導き出した以下を提案したい。
 
 筆者は若かりし頃、駐車違反をしてよく免停になっていた。今振り返ると申し訳ない気持ちでいっぱいだが、駐車違反の累積だけで3、4回は免停になったはずである(当時は今より駐車違反の取り締まりがゆるかった)。
 
 免停の期間は、講習を受けると短くすることができる。筆者は免停になるたびに講習を受け、そこで毎度必ず、安全運転啓蒙(けいもう)動画を見せられた。「軽い気持ちでお酒を飲んで運転したら事故を起こして、人生がめちゃくちゃになる」といった類いのものである。
 
 その類いは物語の見せ方が雑なので、家族が事故を起こしたことで不良になった小学生の子どもが急に金髪モヒカンになるなどしてツッコミどころ満載なのだが、「事故を起こしたらまずいことになる」という印象だけは筆者の中に蓄積していった。それによって筆者は、無謀な運転に傾きがちな若者という生き物にあって「きっちり安全運転する若者」へとなれたのであった。その時から今まで安全運転の心がけは続いているが、これはその当時見たあの啓蒙動画たちによる成果である。
 
 このような経験から、情報モラル教育を児童や生徒に伝えるその現場では、危機意識を育むような動画を繰り返し視聴するのが効果的であると考える。

 たとえば若者の調子に乗った投稿の炎上を防止するなら、先述の文科省チャンネルにある動画「教材(10)軽はずみなSNSへの投稿(全編)」を教室のみんなで何度も見るのである。ちなみにこの動画は、「アルバイトの大学生が商品であるタコを頭に乗せた写真をSNSにアップしたことで、結果的に勤め先のスーパーはつぶれて大学生の人生もめちゃくちゃになる」という内容である。
 
 とまあ、学校教育方面のアプローチで子どもたちのネットリテラシーは可能な限り引き上げてほしいところなのだが、それにも限界があることは周りの大人たちが承知しておくべきことである。学校での教育で児童の行動を100%律することができるわけはないので、あとは保護者や社会が足りない部分をフォローしていく必要がある。
 
 自分のスマホを持ってSNSに炎上投稿をしてしまうような子どもは、おおむね思春期を過ぎてある程度自我を持っていて、そうなると学校が発信することはますますやぼったく感じられるから、学校以外の部分が重要になる。