一般公開されているものでも日進月歩、研究開発の現場では「時進日歩」くらいの勢いがあるのが、昨今の「ジェネレーティブAI」の動き。ジェネレーティブAIとは、何かデータを入力すると、学習済みデータを基に新しいデータを生成してくれる機械学習の分野のことだ。話題の中心が画像生成系(参考記事)から、より影響の大きなチャットボット系へとシフトしつつある中、オープンAIだけでなく、その大スポンサーのマイクロソフト、検索大手のグーグル、SNS大手のメタ(Facebook/Instagram)などが絡み合い、新たな覇権争いの戦場となっている。(テクノロジーライター 大谷和利)
最新のAIはポケモンゲームもプレイ可能、攻略法も教えてくれる
ジェネレーティブAIは、すでにリアルな写真やイラストから司法試験の解答、簡単なプログラム作成、デバッグなどまで、幅広いジャンルにおいてその能力を発揮している。筆者もいろいろ試してみたが、少なからず見当外れのイメージや主張が繰り出されることも含めて、多少のことでは驚かなくなっていた。
しかし、この原稿の執筆直前に、オープンAIの最新成果である「GPT-4」が、ポケモンのゲーム(「ポケットモンスター エメラルド」)をテキストベースで再現(GPT-4自身の説明では「テキストベースの簡易版」)し、多少の誤りはあったものの、チャット形式でプレイできたというツイートを見て、これには意表を突かれた。
この発見は、ARやVR技術を用いて製造業やサービス業のDXをサポートしているPTCリアリティラボのエンジニア、ダン・ダンゴンド氏によるものだが、その意味するところは、GPT-4が「ポケットモンスター エメラルド」の全体構成やゲーム構造までも学習しているという事実である。その結果、ユーザーの求めに応じてインタラクティブに進行することはもちろん、GPT-4が自律的にゲームを進められること、「Win」という命令一つでポケモンリーグをクリアするなど、攻略法も熟知していることなどが明らかとなった。
実際にオープンAIがどのような方法でGPT-4にこのゲームの内容を学習させたのかは不明だが、一つの可能性としては、正しい攻略法を見つけるまで実際のプレイをシミュレートして試行錯誤させたことが考えられる。そうであれば、アクションゲームは無理だとしても、他のロールプレイングやアドベンチャー、パズル系のゲームなどは、同様の学習方法でマスターさせることができ、あるいは、すでにある程度のゲームタイトルについては攻略済みなのかもしれない。