おひとりさまの老後には、現役時代には見えにくい落とし穴がある! 税金や社会保険などの制度は結婚して子どもがいる人を中心に設計されており、知らずにいると独身者は損をする可能性があります。独身者と家族持ちとでは、本来、お金についても老後対策についても「気を付けるべきポイント」が違います。今回は、独身者の家選びについて、独身者がひとりで楽しく自由に生きていくためにやっておくといい50のことを税理士の板倉京氏が著した「ひとりで楽しく生きるためのお金大全」から、一部を抜粋して紹介します。

【おひとりさまのお金対策】賃貸住宅に住み続けるなら考えておきたいことPhoto: Adobe Stock

賃貸に住み続ける場合のメリット、デメリット

 現在「賃貸に住んでいる」という人は、今後持ち家を買うのか、ずっと賃貸を続けるのかを考えてみてください。
 若いうちは賃貸も身軽でいいのですが、仕事を辞めて収入がダウンしたあとも、家賃を払い続けることができるのかどうか、など、「今がよければいい」というキリギリス思考をあらため、老後のわが身を想像しながら、今後のことを考えましょう。

 もし、「老後は今の家賃を払い続けるのは難しそう」ということになれば、「家賃を下げる(その場合はどんなところに住むのか?)」、「持ち家を買う」、「実家に戻る」といったことを、今のうちにシミュレーションしておくといいと思います。
 これから3回にわたって、「賃貸」「持ち家」「実家」のメリット、デメリットを見ていきましょう。

一生「賃貸」で暮らし続けるなら「孤独死保険」も視野に

「住宅ローンに縛られることなく、好きな時に住み替えできる」のは「賃貸」のメリット。でも、退職後の家賃をどう確保するかはしっかり考えておきましょう。今の家賃を払い続けるのが難しい場合は、どの程度なら可能なのか、その場合、どういったところなら借りられるのか、といったことも今から考えておくと安心です。

 デメリットは、高齢になると、新しい賃貸住宅に引っ越したり、更新をしたりする時に「収入が少ない」「孤独死が不安」などの理由から入居や更新を断られてしまう可能性があることです。

 部屋を貸す側からすると、入居者の孤独死は大きなリスクです。入居者が部屋の中で死亡すると、原状回復に特殊清掃が必要になったり、遺品整理に多額の費用がかかったりします。また借り手がつかない、家賃減額せざるを得ないケースもあるので、「孤独死の確率の高い高齢の独身者には部屋を貸したくない」ということになります。

 最近では、こうしたリスクに対し、単身高齢者が賃貸住宅を借りやすくなることを目的に「孤独死のリスク」を補償する「孤独死保険」なるものが販売されています。この保険、基本的には大家さん向けですが、入居者が加入することもできます。通常は火災(家財)保険についている形で、孤独死した場合の「特殊清掃を含む原状回復費用」「遺品整理費用」が補償されます。保険料は、部屋の広さにもよりますが、月額数百円程度と安価です。自分が万が一孤独死をした場合に残された人に迷惑をかけたくない、という場合にも役立つ保険です。ちなみに、大家が加入する場合は、一棟単位で加入する必要があり、まだ加入率は高くないようです。

 また、最近では、「住宅セーフティネット制度」(住まいの確保が難しい人向けの支援制度)なども整備されてきています。このように徐々に高齢化社会に向けて高齢者が賃貸住宅を借り続けられるように、制度が作られつつありますが、今はまだ一定の制限を受ける可能性があることは覚悟しておいた方がいいでしょう。

賃貸のメリット
・気分転換やライフスタイルの変化、ご近所トラブルなどで気軽に引っ越せる
・設備の交換や、修理代などの費用が発生しない
・家計に合わせて引っ越すことで家賃をコントロールできる
賃貸のデメリット
・一生涯家賃を払い続ける
・高齢になると、借りられる賃貸物件が限られる可能性が高い
・いくら家賃を払い続けようと自分のものにならない

 *本記事は、独身者向けのお金&老後対策を書いた、板倉京著「ひとりで楽しく生きるためのお金大全」から、抜粋・編集して構成しています。