「内服薬は男性ホルモンを減らす」
というのは本当なのか

「円形脱毛症の人が市販の発毛剤をいくら塗っても良くなりません。また甲状腺機能の異常や、膠原病など内臓の病気に伴って薄毛になることもあります。その場合、もととなる病気の治療を行うことで薄毛が改善します」(乾医師)

 まずは皮膚科で「診断」を受ける。その上で多くの男性が悩まされるAGAであった場合、どのような治療があるのか。乾医師と同じく、脱毛症の診療ガイドラインに携わった齊藤典充医師(なごみ皮ふ科院長)がこう説明する。

「フィナステリドと、2016年に登場したデュタステリドの内服薬があります。男性のAGAの場合、男性ホルモンのテストステロンが酵素(5αリダクターゼ)の働きによって、さらに活性の高いジヒドロステロンに変換される。そのジヒドロステロンが髪の成長期を短縮させるのです。内服薬は男性ホルモンを減らすと誤解される方が多いのですが、そうではなく“変換”をブロックする働きがあります」

 ガイドラインではフィナステリド、デュタステリドともに男性は推奨度A(行うよう強く勧める)とされている。

「悪くなるという人はほとんどいなくて、現状維持、改善する人のほうが多いです。健康保険適用外のため、当院では診察代と1カ月の薬代込みで1万1000円程度(再診では9500円程度、ジェネリックでは6000円程度)。一生飲み続けなければならない、など重く考える必要はなく、減量してもいいし、途中でやめてもいいのです」(齊藤医師)

副作用が少ないのは
どっちの薬なのか

 副作用に関して、フィナステリドの場合は男性機能低下、まれに肝機能障害が確認されている。だが、臨床試験においてプラセボ(偽薬)群とほぼ同様の副作用発生率となっているため安全性は高いといえるだろう。デュタステリドのほうは国際臨床試験および国内の臨床試験において性欲減退や、男性機能低下が約3~11%と比較的高率であった。

 男性のAGAに対する発毛効果に関しては2種の薬とも高い根拠があるが、女性はそれらを服薬することができない。胎児に奇形ができるなどのリスクがあるためだ。ガイドラインでも女性は推奨度D(行うべきではない)と評価されている。

 齊藤医師は、「男性は男性ホルモンの影響で、前頭部の生え際部分や頭頂部が薄くなっていく。けれども女性の場合は原因が多岐にわたり、症状もいろいろなため、実は薄毛になる原因が判明しないことも少なくありません」と補足する。