変化する韓国・尹政権の対日政策

 3月6日の韓国政府の徴用工に関する発表、続く尹大統領の訪日と岸田文雄首相との首脳会談など、韓国政府は悪化した日韓関係を修復したいと考えているようだ。尹大統領の脳裏には、「前政権の対日政策が韓国に負の影響をもたらした」という認識があるのだろう。

 市民団体や労働組合などを主な支持基盤とした、革新派の文在寅(ムン・ジェイン)前大統領は、経済面で中国との関係を重視した。それに対して、外交面では北朝鮮との融和、わが国への厳しい姿勢を鮮明に示した。その結果、一時は「戦後最悪」と言われるほど、日韓関係は冷え込んだ。

 2018年、韓国の最高裁は日韓請求権協定の効力を認めず、元徴用工問題に関して日本企業に賠償を命じる判決を下した。19年7月には、軍事転用可能な品目の輸出管理に関し、韓国の体制に懸念が報じた。経済産業省は、フッ化ポリイミド、レジスト、フッ化水素の対韓輸出手続きを、包括輸出許可から個別案件ごとの許可申請へ厳格化した。その後、韓国では、日韓の「軍事情報包括保護協定(GSOMIA)」を見直す機運も高まった。

 そうした政策運営は、サムスン電子やSKハイニックスなどの韓国主要企業に無視できない負の影響を与えた。対韓輸出管理体制見直し発表の直後、文政権は対応のために主要企業のトップとの会談の場を設けた。しかし、サムスン電子の李在鎔(イ・ジェヨン)会長(当時は副会長)らは、政府との会談を欠席した。

 彼らは、本邦金融機関や企業との取引関係の維持の確認、在庫確保などのために来日した。韓国の経済界にとって、対日関係の悪化は経済と金融市場に決定的なインパクトを与えるとの危機感が相当に強かったのだろう。その後、韓国経済界では対日関係の修復を求める考えが高まったようだ。それは、尹政権が対日関係修復を目指す大きな要因になった。