顧客が不動産を選ぶとき
「美意識の共鳴」が起きている

 顧客が不動産を選ぶ際、最も強い影響力を持つのは「直感」だ。

 何となく「良い・悪い」「自分に合っている・合っていない」を感じて、それが最初の2秒で決まる。そこでNGならば、その後にどんなメリットを説明しても気持ちが動くことはない。

 ちなみに、顧客が複数の物件スペックを表にまとめ、「ディスポーザーが付いている・付いていない」「天井高が2.5mと2.4m」などと比較検討するのもよくある話だ。

 だがこの場合、実はどの物件も「決め手に欠けている」と思った方が良い。こうした「論理的な考察」は「直感」の対極にある。いずれも直感で魅力を感じていないから、そもそも比較などするのだ。

 では、顧客が「最初の2秒」で物件を好きになるとき、その内面で何が起きているのか。

 この点について、筆者は「美意識の共鳴」が起きると思っている。これは人に対しても同じだ。ルックス、話し方、物腰、服のセンスなどが共鳴すると、安心して気を許しやすくなるものだ。

 上記の要素を不動産に置き換えると、外観や建物のファサード(前面部)、共用部のエントランス、専有部の玄関が該当する。

「たった2秒」でこれらの魅力を顧客に訴えるには、人間の五感に訴えるのが得策である。

 もちろん視覚的なデザインも重要だが、それ以外の要素にも配慮し、人間の繊細な感性にアプローチすると非常に効果的だ。

 視覚的な効果については、色みで高級感を出すのはブラウン系、開放感や明るさを出すにはホワイト系、重厚感を出すにはブラック系にするのがセオリーだ。

 高級感を演出する上ではライティングも効果的である。建物の内外を直接照らすだけでなく、間接照明やスポット照明など、陰影の作り方にもさまざまな方法がある。

 シンボルの見せ方も重要だ。東京・日比谷にある帝国ホテルのエントランスには大きな季節の装花がある。桜やひまわりやバラなどが圧巻の大きさで鎮座し、記念写真スポットとなっている。