5倍以上も積み増しされた中国の外交費

 中国は新冷戦に耐えるための布石を打っている。

 3月上旬に開催された全人代(全国人民代表大会)で発表された2023年の予算案にも、それが映し出される。国防費として前年比7.2%増の1兆5537億元(約2256億ドル)が計上され、また外交費は前年比12.2%増の548億元(約79億ドル)が計上された。

 中国の一部市民が注目したのは、2022年の2.4%の伸びに対して5倍以上も積み増しされた外交予算だった。対外援助が大幅に増加したとみられており、3月26日に中国がホンジュラスと正式に結んだ国交にも「台湾を切り崩す狙いで、ホンジュラスに数千万ドルが送金された」ともささやかれている。

 南半球の国々に触手を伸ばしている中国は、これらの国々との関係強化に、また残り13カ国となった台湾と外交関係にある国を取り込むために、外交予算を巧みに利用する可能性がある。

 一方、中国海関総署が行った1月13日の報告によると、中国の対ロシア貿易は2022年に1兆2800億元(約1902億ドル)となった。中国の輸出入総額に占める割合は3%に過ぎないが、中露貿易は約30%の成長を遂げた。

 特にロシアからの中国への輸出の伸びが顕著であり、前年比43.9%増の7670億元(約1141億ドル)となった。うち7割以上が石油、天然ガス、石炭などのエネルギー関連である。また同年、ロシアからの穀物の総輸出量は15%の増加となったが、中国への輸出量は小麦などを中心に78%も増えた。

 原材料も市場も国外に求めなければならない中国は、西側諸国が敷いた包囲網の突破口をロシアに求め、エネルギーと食料を調達するための後方支援に位置づけているのだろう。中国とロシアの貿易は、二国間で設定した「2024年に2000億ドル」の目標に近づきつつある。

 他方、中国の若い世代の中には、中国のロシアへの接近を快く思っていない層も存在し、「貿易を通して中国がロシアに資金提供を行い、ロシアの軍備増強を間接的に支持していくのではないか」と疑念を向ける人もいる。また、こうした布石が「国際社会で中国をさらに孤立させるのではないか」と不安に思う人もいる。