努力しているのに失敗ばかりしてしまう…「いいかげん」「やる気がない」と思われがち
【25歳・ADHDの会社員の例】

 ADHDのWさん(25歳・女性)は、書類に誤字・脱字や計算間違いなど不注意による単純ミスが多いため、上司によく叱責されるそうです。電車の乗り間違いや遅刻も多く、自分でも何とかしたいと思っているのですが、繰り返してしまいます。

「いいかげん」「やる気がない」などと思われがちですが、ミスが多いことを本人が一番自覚しているのです。

 ADHDの人のこうした失敗は、注意が次から次へと別のものに移ってしまうために起こることがあります。目の前のことから意識が離れ、あれこれと思いを巡らせてしまう“マインド・ワンダリング”と呼ばれる状態になることも多いため、集中してひとつのことを成し遂げることが苦手なのです。

 発達障害の人の脳は、人がボーっとしているときに活性化する、デフォルト・モード・ネットワーク(DMN)という領域が、マインド・ワンダリングと関係しているとも考えられています。

「自分では間違えないよう頑張っているつもりなのに…」と言うWさんは、私にこんな話をしてくれました。

「会社に勤めて3年目。仕事のミスがいつも多くて困っています。間違えないように頑張っているつもりなんだけれど……。先日も、『ちょっとミスが多すぎるね』と上司に言われてしまいました。家事もちゃんとできないことが多く、いつも落ち込んでしまいます」