入学して間もない休み時間、みんなが次の授業の準備をしたり、数少ない知り合い同士がおしゃべりしたりしているとき、僕は教卓に行って一生懸命暗記していました。それで全員、初めて声をかけるときに名前で呼ぶようにしました。「え? 何で知ってるの?」と驚かれて、「いや、座席表を見て覚えただけだよ」と。そこから会話がスタートする。

 他にも、ホームルームで、みんなやりたがらない進行役を「僕でよかったら、やります」と自分から買って出たりしました。僕の動機は本当にシンプルで、「早くみんなになじまなくちゃいけない」と考えただけです。

チームの中で足りないものを補えばいい

 中学を卒業してすぐ親元から離れての生活を始め、まったく知り合いがいない中で始まった学校生活だったので、自分が何とかちゃんと勉強して生きていく環境を作らないとヤバい……そんな恐れ、不安、焦りがありました。だから入学当初から、とにかくクラスのためにいいかなと思うことを率先してやったというわけです。

 おかげでクラスメイトにも早く存在を覚えてもらい、コミュニケーションが増えたことで得られたフィードバックはたくさんありました。

 何をギブすればいいかわからないときは、一歩引いて、「これをする人がいたらもっとうまくいきそうだな」ということを想像するとよいでしょう。学校のクラスでも企業のチームでも、組織の一員が行うギブとして最も効果的なのは、その組織の中で足りないものを自分が補うことだからです。

 たとえば、高校に入学してすぐにクラス全員の名前を覚えた僕に、みんなが好感をもってくれたのは、お互いに名前を知らないせいでクラスのコミュニケーションがうまくいかないという困りごとがあったからです。

 実際、みんなの名前を覚えている僕がハブ(拠点)のようになって、クラスメイトたちのコミュニケーションの活性化にひと役買えたのかなと思っています。大げさに言えば、それまで組織になかった機能を僕が補填(ほてん)したわけです。

 そういうことを自分でどんどん見つけて、自分から積極的に取り組んでいく。そうすると、だんだん周りから信頼されるようになっていきます。

AERA dot.より転載