不動産デベ新序列 バブル崩壊前夜#1Photo by Ryo Horiuchi

2023年は東京都心で大規模再開発ビルの開業ラッシュを迎える。三菱グループが手掛ける「田町タワー」や森ビルの「麻布台ヒルズ」などの目玉プロジェクトでは、テナント集めに苦戦しているもようだ。特集『不動産デベ新序列 バブル崩壊前夜』(全6回)の#1では、大手不動産デベロッパーを襲う三重苦を解き明かす。(ダイヤモンド編集部 堀内 亮)

二度あることは三度ある?
不動産業界が身構える「ジンクス」

 二度あることは三度ある――。2023年に入り、不動産業界が身構える、あるジンクスがある。

 そのジンクスについて、大手不動産デベロッパーの幹部がこう打ち明ける。「森ビルの大規模プロジェクトが竣工する前って偶然だろうけど、なぜか市況が悪くなる」。

 最初のタイミングは、「六本木ヒルズ」が竣工した03年。2000年にITバブルが崩壊し、「平成不況」に突入したところへ大規模オフィスビルの大量供給も重なり市況が崩れた。03年のオフィス空室率は8%近くにまで達し、過去最悪の水準となった。

 2度目のタイミングは12年だ。東京都港区に森ビルの「アークヒルズ 仙石山森タワー」が竣工したとき、日本経済はリーマンショックと東日本大震災による不況に苛まれていた。当時、大規模オフィスビルの供給量が少なかったにもかかわらず、10~12年の空室率は03年以来の最悪水準となった(下図参照)。

 そして、新型コロナウイルス禍を経て迎えた23年には、森ビルの2大プロジェクト「虎ノ門ヒルズ ステーションタワー」「麻布台ヒルズ」が竣工する。くしくも、東京都心で大規模再開発プロジェクトが開業ラッシュを迎えるタイミングと重なった。

 二度あることは三度あるのか。それとも三度目の正直か。だが、やはり今年もジンクスを打ち破るには旗色が悪い。

 複数の業界関係者によれば、森ビルの2大プロジェクトのうち、麻布台ヒルズのテナントの入居内定率は3割程度にとどまり、苦戦がうかがえる。

 森ビルだけではない。三菱地所がリーシング(賃貸支援業務)を担う「田町タワー」や「3rd MINAMI AOYAMA」、野村不動産が開発する中規模オフィスビル「PMO」といった新規プロジェクトでも、テナント集めが難航しているのだ。

 都心部のオフィス需要は空前のバブルが続いてきた。だが、足元ではこれまでとは異次元の苦境が不動産デベロッパーを襲っている。次ページからは、森ビルや三菱地所、野村不動産の苦しいテナント集めの実情とともに、大手不動産デベロッパーを襲う「三重苦」の正体を解き明かす。