NASAは結果をフィードバックすると公言しているわけではない。セミファイナル以上になると、過去に何度もファイナルまで残った候補者がいて「聞けば教えてくれるよ」と伝えてくれる。

 具体的には、メール等でアポイントを取ると、選抜委員会トップから電話があり「今後、どんな点を伸ばせばいいか教えてくれる」そう。挑戦者を育てようというNASAの姿勢が垣間見える。

JAXA「初の学歴不問」宇宙飛行士試験で、意外な“真の課題”が不合格者の声で露呈4月頭、NASAは「アルテミスII」ミッションで月の周りを周回飛行する4人の宇宙飛行士を発表した(提供:NASA)

「学歴不問」の選抜試験で
見えてきた「真の課題」

 日本はどうか。筆者は今回、選抜に挑戦し残念ながら涙をのんだ人を多数知っている。彼らは誰が宇宙飛行士になってもおかしくないと思える人ばかり。なぜ不合格になったのか納得できていない人もいる。

 この点について、2年前、宇宙飛行士選抜に関する記者説明会でJAXA担当者は「不合格だった時のフィードバックは当然かける方向で考えている」と語った。実際は?

 今回の宇宙飛行士選抜は書類選抜、第0次~3次選抜まで行われた。書類選抜で4127人から2266人まで絞られたが、結果について個人へのフィードバックはなかった。

 第0次選抜以降は個人に対しフィードバックが行われた。ほとんどが各検査について合格/不合格の結果と総合評価だが、0次選抜の一般教養試験・STEM(理工系)試験については偏差値が、2次選抜の面接試験についてはS~Cのランクも明示されたようだ。JAXAによると3次選抜のファイナリストへはそれぞれの良い点を伝えたという。

 過去の宇宙飛行士選抜ではまったく開示がなかったから、進歩したといえる。だが、受験者からは「医学検査だけ不合格だった場合、どの項目が不合格だったのか教えてほしい」など医学検査のフィードバックへの要望が上がっていると聞く。

 これは理解できる。試験や面接などは対策により向上する可能性がある。だが医学検査の場合、努力や治療ではどうにもならない場合があり得るからだ。

 JAXA久留靖史氏は「医学的な基準については多数の問い合わせを頂き、課題として認識している」と述べる。だが「宇宙飛行士が飛行任命を受けるための基準は国際的に定められ、各国ともオープンにしないことになっている」と開示できない理由を話す。

「将来的に宇宙船の要求で医学基準が変わる可能性もある。今後はそうした状況の変化も踏まえながら、募集要項でオープンにできるものは極力オープンに、できないものについては個別のフィードバックで、もう少しできることがないか検討していく」とのこと。

 ちなみにNASA選抜での医学検査のフィードバックはどうか?前述の中村さんによるとNASA職員はNASA内の医局で検査を受けられ、検査中に中村さんは骨密度に課題がありそうと教えてもらったそう。ほかのNASA受験者らも医学的な課題を教えてもらったようだが、NASA以外の受験者も医学的フィードバックが受けられたかは不明とのこと。