そして阪急も昨年10月に「特別車両」参入を発表。2024年に京都線の特急・通勤特急・準特急に座席指定制車両を導入する。現時点で明らかになっているのはここまでで、運行本数や料金などはまだ伏せられているが、サービスの形態から見ても、京阪プレミアムカーに真正面から対抗するサービスになりそうだ。
関東の通勤路線はロングシート主体だが、新快速など関西の速達列車は転換クロスシートが主流であり、わざわざ追加料金を払って着座するニーズは乏しいと考えられてきた。それだけに、ただ着席が保証されるだけでは不十分で、座席や車内空間にクオリティが求められるのだろう。
ではこうしたトレンドは関東にも波及するのだろうか。前述の通り、関東私鉄は一部車両ではなく全体を指定席とするライナー方式が主流だが、東急は2023年度内に、大井町線に続いて東横線に「Qシート」を導入予定だ。
また京王電鉄は3月24日、2018年から運行する座席指定列車「京王ライナー」のサービスを拡大し、一部車両を指定席として終日運転することを検討していると公表した。
コロナ禍で生じた余剰輸送力の活用と、収益性向上の両面から見て、併結方式の指定席列車は魅力的な選択肢だ。だが関東私鉄はほとんどの路線が地下鉄と直通運転しており、神戸~大阪~京都のような両方面に需要のある区間は東京~横浜間以外に見当たらない(横浜ですら東京の求心力が強すぎてつり合いがとれない)。
そうすると通勤列車としても運用できる座席転換型が優先されるため、特別感の演出は小田急ロマンスカー「GSE」や西武特急「Laview」、東武特急「スペーシアX」など特急型車両が担当することになる。関東ではプレミアムカーのようなハイグレードな特別車両の導入はハードルが高そうだ。