デジタル給与支払いに84事業者が登録
リーマンショック後、わが国でもデジタル化の加速を背景に、非金融分野の企業による銀行分野への新規参入が増えた。一例が、資金移動業を行う企業の増加だ。デジタル払いはこの仕組みを利用し、企業が就業者に銀行を介さずに給料を支払う。資金移動業とは、銀行以外の事業者が行う送金サービスをいう。
事業者は送金の上限金額(5万円以下、100万円以下、100万円超)によって3つに分類される。100万円以下であれば監督当局への登録を経て事業を開始する。登録とは、行政機関に申請を行い事業者として名簿に記載されることで、正式にビジネスを開始できる制度を指す。金融庁によると、2023年3月15日時点で「PayPay」(ソフトバンク系)、「楽天ペイ」(楽天系)、「d払い」(NTT系)など84業者が登録されている。
資金移動サービスの利用者は、銀行口座とひも付けたスマホのアプリに入金し、買い物や送金に使う。デジタル払いでは、この仕組みを利用し、銀行口座を介する手間を省いて企業(雇用者)から就業者へ、給与は支払われる。
デジタル払いは、資金決済システムがネット空間に取り込まれた結果として、口座振替決済などの銀行ビジネスが他の業界に染み出していることを象徴する変化の一つだ。そのメリットを生かすため、20年夏以降、厚生労働省は賃金支払いの新しい選択肢として資金移動業者の口座活用を目指し、法令の改正に取り組んだ。
なお、デジタル払いの利用に当たって、雇用主は就業者の個別の同意を得る必要がある。不正な資金引き出しなどによって就業者が損失を負った場合、補償されなければならない。振込金額が100万円を超える場合には、あらかじめ就業者が指定した銀行口座などに自動的に出金される。ATMなどによって1円単位での現金化も可能だ(最低月1回は就業者の手数料負担なし)。