ファイブ・アイズに入りたい日本

 戦後、一貫して「国内外における情報活動が弱い」と言われてきた日本も、近年、その姿勢が変わってきました。2013年には「特定秘密保護法」が制定され、公務員を対象に機密を外部に漏らした場合に罰する法律が定められました。

 これはアメリカのブッシュ(息子)大統領と小泉総理が日米のトップで「日米蜜月」と言われていた時代に、ブッシュの方から「日本にファイブ・アイズの情報を渡してもいいんじゃないか」と言い出したことに始まります。小泉総理はアメリカのイラク戦争にも協力的でしたから、ブッシュは気をよくしていたのかもしれません。

 日本も、世界最高峰のインテリジェンスのおこぼれをもらえるなら、これに勝ることはない、と喜びましたが、アメリカ側から注文が付きます。「日本に渡した情報が、日本から漏れることがないようにしてもらわなければ、情報は渡せない」と。もちろんアメリカもどの情報を渡すかは精査していますが、重要情報がすぐに中国やロシアに漏れてしまうようでは困る、というわけです。

 そこでできたのが、特定秘密保護法です。「特定秘密」とは、漏洩すると日本の安全保障を著しく毀損する「防衛・外交・テロ・スパイ」に関する情報のことで、その情報を扱える人物をきちんと管理しようとするものです。政府関係者の間でも「あの法律ができてから、アメリカから来る情報の質が格段に上がった」と言う人がいるほどです。

 ただ、アメリカはファイブ・アイズにおけるイギリス以外の3カ国に対しては監視や盗聴を行っていました。もちろん、同盟国で米軍基地のある日本の情報は既にアメリカに「丸裸」にされているのでしょうが、「ファイブ・アイズに入れてもらえる」と喜んでばかりはいられません。インテリジェンスの世界で、一方的に情報を与えられるということはありませんから、高度な機密情報を渡される以上は、こちらも何らかの情報を相手に渡さなければならない、ということでしょう。