新入社員時代に、稲盛さんの話を日々直接聞けた幸運
稲盛さんや社長の森山さんと車座になって酒を飲み、直接いろんな話が聞けたというのは、振り返れば、本当に幸運なことだったと思います。ところが、僕たち新入社員は、これしか知らないわけですから、会社というのは、こういうものだと思っていました。
しかし、京セラの人から見れば、とんでもなく羨ましいことだったと聞きました。稲盛さんと直接、話をする機会なんて、普通はほとんどない。職場に顔を見せることだって、なかなかない。ところが、第二電電ではしょっちゅう会社に姿があるし、話も真剣に聞いてもらえるわけです。
ただ、稲盛さんは大変だったと思います。手足になるのが、新入社員しかいないわけですから。
そんな僕たち新入社員は、というと、電気通信事業法の法案通過が1年ほど遅れることになり、1年間研修漬けになっていました。幸運だったのは、一緒に働くことになった電電公社出身の人たちは、MBA修了者が多かったことです。
電気通信の基礎から始まり、マーケティング、英会話、パソコン研修等、みっちり勉強させられました。中でもこのとき新鮮だったのが、プレゼンテーション研修です。今から40年ほど前に、すでにA4横書きの資料を使ったプレゼンの仕方を教わっていたんです。これは、その後の人生に大きなプラスになったと思っています。
当時、ベンチャー企業だったリクルートやぴあを訪問して、ベンチャー企業の何たるかを学べたのも、貴重な経験でした。(後編に続く)
1961年、滋賀県生まれ。84年横浜国立大学工学部金属工学科卒業。84年京セラ入社。同年第二電電入社。2003年KDDI執行役員 ソリューション事業本部コンテンツ本部長兼コンテンツ企画部長、10年代表取締役執行役員専務、16年代表取締役執行役員副社長、18年4月代表取締役社長、23年4月CEO。