久しぶりにあちこちで歓送迎会が開かれている。解放感のあまり“アルハラ”をしないように。胃がん死リスクを強要しているかもしれないからだ。
早期発見で長期生存がかなうイメージがある胃がんだが、死亡者数は男性が肺がん、大腸がんに次いで3位、女性も第5位と決して侮れないがんだ。
特に、スキルス胃がんに代表される「びまん型胃がん」は、早期発見が難しいうえに、既存の治療法では経過が思わしくない。
国立がん研究センターのグループは、日本人697人を含む、胃がん患者1457人の検体から遺伝子データを解析。びまん型胃がんの発症に関係する遺伝子を探索し、発がんリスクを調べた。
喫煙や紫外線などの「発がん要因」は、遺伝子の特定の部分(=変異シグネチャー)に変異を起こす。つまり、がん細胞に生じている変異を調べると、逆に変異を起こした発がん要因が解るわけだ。
今回の解析では、14の変異シグネチャーが判明。なかでも「SBS16」と呼ばれる変異シグネチャーは、びまん型胃がんの東アジア人に多く、性別では男性と、また、アルコールを分解しにくい遺伝的体質と有意に相関することが判明したのである。
飲酒で生じるこの変異は、さらに発がんやがんの悪性化を直接促進する「ドライバー遺伝子」の変異を促し、びまん型胃がんの発症を誘発することも明らかになった。
飲酒が胃がんの発症リスクになることは以前から指摘されており、今回、それが遺伝子解析で裏付けされたわけだ。研究者は「お酒に弱い人が飲酒をする際は、注意が必要」としている。
ちなみに、アルコール分解能(正しくはアルコールを代謝する過程で生じるアセトアルデヒド分解能)が不活性~低活性の人は、(1)全く分解できず少量の飲酒ですぐ、真っ赤になる、(2)少量の飲酒でアセトアルデヒドが体内にたまるが、慣れると飲めるようになり「強くなった」と勘違いする危険なタイプ、(3)飲酒中は顔に出ないが二日酔いがひどいの3種類。日本人の4割は、この三つのどこかに当てはまる。ご注意を。
(取材・構成/医学ライター・井手ゆきえ)