緊急事態宣言の発出により
東京への人口流入に急ブレーキ
22年の人口増加でV字回復を果たしたように見える東京都だが、コロナ前と現在を比較し、人口流入で決定的に異なる点は、4月以降の転出の状況だ。
当然のことながら大手企業や有名大学が集中する東京都には、毎年3月になると4月以降の新年度に向けて新入生、新社会人が全国各地から大量に流入することは周知の事実である。
例えば、コロナ前の19年3月には東京都で3万9556人、東京23区では3万2434人の転入超過が発生している。隣接する横浜市で6529人、川崎市でも5839人の転入超過だが、東京23区はその約5倍だから、いかに東京都心部への人口集中度合いが激しかったかが分かる。19年の年間集計では、東京都が8万2982人、東京23区に限っても6万4176人の転入超過を記録しており、コロナ前の東京都への人口流入・集中度合いの強さがうかがえる。
コロナ禍が発生した直後の20年3月も、東京都は4万199人、東京23区では3万2205人という大きな転入超過数を記録した。
前年とほぼ同じ転入超過数であることは、これからも(社会構造が変化しなければ)毎年同じような人口流入が継続することを示唆している。そのため、流入先である東京都内各地での賃貸住宅に対するニーズも際立っていた。
当時は空きが出てもすぐに埋まるのが当たり前で、空室が数カ月続くというのは、例えば駅からの所要時間が15分以上かかるのに賃料が相場から50%以上高いワンルームなど、マーケットアウトしているような物件でもない限り、全く想定できない状況にあった。
しかし、20年、すなわちコロナ禍の拡大が本格化し“緊急事態宣言”の発出などによって事実上の移動制限が実施された後の動きは大きく異なる。
19年の東京都の移動人口は3月の大量増以降も堅調な(毎月数千人程度の)転入超過が継続したことで年間8万人超という人口増が積み上がった。だが、20年は5月以降、一転して転出超過が発生し始める。
東京都および東京23区は7月以降、6カ月連続の転出超過を記録し、20年前半の“貯金”を一気に吐き出した。東京都の20年の年間転入超過は3万1125人(前年比▲62.5%)、東京23区は1万7279人(同▲73.1%)にとどまり、人口増ではあったものの、前年から一転し、前年比で6~7割という大幅な減少を記録している。