都内タワマンエリアは高収入の中国人が増加

 少子高齢化が進む日本で、不動産市場を活性化させようとすれば中国人の購買力も無視できない時代になった。

 都内の城東エリア(葛飾区、墨田区、江東区、江戸川区、台東区)を中心とした物件を取り扱っている不動産仲介業者の島村勇一さん(仮名・50代)によれば「顧客の3割は中国籍です」という。

 島村さんは「タワマンが多いエリアは、中国人比率が高まる傾向があります」とも話す。その周辺一帯は高収入を手にする中国籍の高度人材が住むエリアともいえ、今後はこうした人材が日本で永住権を取り、親を呼び寄せて家族を形成すれば、中国人による住宅需要はさらに増えることが見込まれる。

 前出の大川さんも「都心の大手を含む不動産会社は、どこも中国人スタッフを雇うようになりました。今、業界では宅建資格の保有者は引く手あまたです」と言う。

 ちなみに、中国籍や外国籍の宅地建物取引士は何人いるのか。不動産適正取引推進機構に尋ねると「そのような統計は取っていない」という。

 一方、「かつて日本の不動産業界はとてもドメスティックな業界でした」と語るのは、大手不動産企業を退職した松木大輔さん(仮名・60代)だ。「バブル期に日本の不動産企業は海外不動産に投資をしたものですが、まさか外資が日本の不動産市場にこれほど目を向ける時代になるとは」と驚きを隠さない。

 こうした事情もあり、日本の国も業界も外資による投資への対応は後手に回りがちだ。しかし、他の先進国では、外資や外国人が簡単には不動産市場にアクセスできない仕組みがすでに構築されている。

 例えば、ドイツでは外資が不動産を取得する場合は事前の登録が要求される。オーストラリアでは外国人による不動産購入に規制を設けており、 FIRB (外国投資審査委員会)による承認が必要となる。カナダでは今年から、外国人による住宅購入が2年間禁止となった。詳細は稿を改めお伝えするが、逆に言えば日本では外国人が簡単に住宅を購入できる状態にある。

 不動産の中でも住宅への投資は、オフィスビルや商業施設とは異なり、人が住む家と密接に関連する。そのため、「経済が回ればいいじゃないか」という発想だけでは済まされない。中国でも住宅市場に仕掛けられたマネーゲームで国民がひどい目に遭った。国民生活保護の観点から、日本においても、外資による投資への審査や適正取引の監視のためのメカニズム強化は急務だろう。