大手企業の住宅販売も中国人客頼み

 大阪は、日本でも中国資本の進出が進む都市の一つだ。市内の上場企業に勤務する管理職の須永孝さん(仮名・50代)は「最近は、大阪のど真ん中で中国人の声を聞くようになりました」と話す。大阪に好んで住む中国人が増えているようだが、その大阪でも、宅建を取得した中国系の不動産業者が活発な住宅取引を行っているようだ。

「売れ残ったマンションの販売代理を、中国系不動産業者に依頼するケースが出てきました。かつて日本の大手不動産会社などは中国系業者など相手にしなかったものですが、今では『中国人のお客さんに売ってください』という時代に変わりました」(須永さん)

 数百戸単位の販売戸数を抱えるタワマンでは、初めから何割かに相当する戸数を中国人対象に販売するケースもあるという。日本の不動産業界にとって、中国人は上客になっていることがうかがえる。それどころか、土地を仕入れて開発を行う中国系デベロッパーすら出てきているというから驚きだ。

 中国資本が住宅市場に参入することについては、賛否両論ある。経済の循環を考えれば悪い話ではないが、日本の同業者の間では順法精神の低さによって起こるトラブルがささやかれている。

「中国系の不動産業者は、建築基準法では再建築不可などの難しい土地建物を売り付け、客から『聞いていなかった』『こんなはずじゃなかった』といったクレームが入ってくる」といった話や、「住宅事業部を立ち上げた中国系企業から宅建免許を貸してほしいと迫られる」といった話もある。

 後者はいわゆる「名義貸し」行為だ。これは宅建業法違反となるため、日本のまともな不動産会社が行うことはないが、「上に政策あれば下に対策あり」なのか、中国人経営者の中には法の網をかいくぐる脱法行為を何とも思わない者もいる。