埼京線と湘南新宿ラインは
武蔵野線のおかげで誕生

 1976年に貨物専用の府中本町~鶴見駅間、1978年に新松戸~西船橋駅間が開業しても運行本数は大きく変わらなかったが、1980年代に沿線人口が増加すると増発が続き、民営化時には朝ラッシュ時7~10分間隔(東所沢~西船橋駅間)、日中毎時5~6本という現在のダイヤに近い形になっている。

 武蔵野線建設によりダイヤに余裕ができた山手貨物線は、1980年代に渋谷、恵比寿、新宿駅の貨物取り扱いを終了。貨物駅跡地を転用して旅客ホームを新設し、1985年に大宮~池袋駅間で開業していた埼京線が、1986年に新宿駅、1996年に恵比寿駅、2002年に大崎駅まで延伸。その前年、2001年には湘南新宿ラインの運行が始まった。

 今では欠かせない存在のこれらの列車は、武蔵野線のおかげで誕生したものであり、数十年の時をかけて実現した息の長いプロジェクトであった。

 武蔵野線の重要性は今後も変わらない。コロナ禍の旅客需要低下の影響を受けて、武蔵野線の朝ラッシュ平均混雑率(東浦和→南浦和間)は、2019年調査の166%(7時21分~8時21分)から、2021年調査の137%(7時5分~8時5分)まで減少したが、実はこの137%という数字はJRの路線で最高であり、減便の対象となっていない数少ない路線である。

 もうひとつ、武蔵野線の秘めた可能性が各路線への直通運転だ。現在も大宮駅から東北貨物線経由で府中本町・八王子方面に乗り入れる「むさしの号」、同じく西船橋・新習志野方面に乗り入れる「しもうさ号」が運行されており、運行本数は少ないながら乗り換え不要の利便性から通勤に活用する人は多い。また貨物線用の府中本町~鶴見間を通過する臨時列車もまれに設定されているが、今後はこうした列車の増発、新設も考えられる。

「本業」たる貨物輸送も、モーダルシフト促進の流れを受けて注目が集まっている。武蔵野線の次の50年は、今後の鉄道のあり方を象徴するものになるのだろう。