商業用不動産ファンドが「次の危機」の震源地に?空室率上昇と利上げで警戒感写真はイメージです Photo:PIXTA

最近、資金運用に行き詰まる投資ファンドが増えている。コロナ禍を経た「働き方の変化」で、オフィスビルの空室率が上昇していることが関係している。加えて金利が一時上昇したこともあり、商業用不動産の価値下落によって顧客への資金返還が難しくなるファンドが出ているのだ。金融専門家の中には、次の危機の震源地として「商業用不動産などに投資するファンド」への警戒を強めている向きがある。(多摩大学特別招聘教授 真壁昭夫)

 2023年3月、欧州では金融大手のクレディ・スイスが経営危機に陥り、同じく金融大手のUBSに救済買収された。また、米国では中堅銀行の破綻が立て続けに複数件発生した。4月中旬現在、世界の金融市場はひとまず落ち着きを取り戻している。ただ、危機的な状況がすべて去ったと判断するのはやや尚早だろう。米国の中堅銀行の経営不安はまだくすぶっている。加えて、一部の大手ファンドが厳しい状況に追い込まれつつあるとの見方もある。

 それは、新型コロナウイルス感染拡大による「働き方の変化」で、オフィスビルの空室率が上昇していることが関係している。加えて金利が一時上昇したこともあり、商業用不動産の価値下落によって顧客への資金返還が難しくなるファンドが出ているのだ。金融専門家の中には、次の危機の震源地として「商業用不動産などに投資するファンド」への警戒を強めている向きがある。

 もう一つ懸念されるのは、投資家の間で「年央から米FRB(連邦準備制度理事会)が利下げを行う」との期待が出ていることだ。一連の銀行破綻で景気後退の懸念が高まり、「FRBは物価より景気の下支えを優先する」との見方だ。しかし、冷静に考えると、世界的にインフレは高止まりしている。短期的に、FRBやECB(欧州中央銀行)の金融政策が緩和に転じるとは考えづらい。

 今後の資産価格の展開次第では、一部の投資ファンドが過剰なリスクを抱え、業況が悪化する可能性がある。それが現実のものになると、世界的に金融システムの不安定感を高める要因になるだろう。