今のままでは日本は弱い。内燃機関関連が減っていく中で自動車メーカーも従来のメカニカルエンジニアからソフトウエアエンジニアを増やしていくなど、人的なシフトが求められている。あるいは最近はやりのリスキリングですかね(笑)。本当にこれを加速していかないと間に合わなくなる。これも大きな警鐘の一つですね。
――日本の自動車メーカーは乗用車8社にトラック4ブランドが生き残ってきた世界でもまれなケースですが、自動車メーカーの牙城が強くスタートアップがなかなか育たない状況もあります。
志賀氏 EVのスタートアップは何社か出てきていますが、実は資金調達、投資が間に合わない。米国などはテスラの他にも新興メーカーのリヴィアンなどが出てきて、相当資金が流れています。日本は乗用車と商用車で12ものブランドがあり、大企業エコシステムがデカくてなかなか隙間がない。新たなイノベーションが起こらない一つの理由でしょう。われわれのような官民ファンドも含めてベンチャーキャピタルが応援していますが、欧米に比べるとまだまだ規模が小さい。
それでもソニー・ホンダのような新たなフォーメーションも出てきています(筆者注:日立オートモティブシステムズとホンダ系部品3社が統合した日立AstemoがEVシフトをにらんで工場投資をするのに、官民ファンドのJICキャピタルが出資して支援することが3月30日に発表されるなど、ファンドの動きも見られるようになっている)。
――日本のEV市場も中国BYDや韓国・現代自動車が参入し、昨年は日産・ホンダの軽EVがカーオブザイヤー三冠を独占するなど、ようやく「EV元年」スタートと言われました。
志賀氏 軽EVは本当にようやくですね。私が日産COO最後の年の13年6月に三菱自動車工業と共同開発の軽デイズの発表を三菱の水島工場でやったんですが、その時に益子さん(故益子修三菱自工元社長)と「次は軽EVをやろうね」と言ってたのがちょうど10年かかったんですよ。それでも日本のEVは緒に就いたばかりです。
――豊田章男自工会会長の日本自動車連合を引っ張るリーダーシップが脱炭素は「EV一辺倒でない」という立場を取っていることから、日本のEVが出遅れているとの見方もあります。