「前頭側頭型認知症の特徴は人格変化です。急に怒りっぽくなる、他人を思いやる気持ちがなくなり善悪の判断が曖昧になる、といった症状が顕著に出ます。ただ初期の段階では記憶障害や認知機能の異常などはあまり見られず、本人も病気の自覚がなかなか持てないため、認知症と診断するには時間がかかることも多いのです」

 以下は長谷川医師による、前頭側頭型認知症のチェックリストだ。

・状況に合わない行動…場所や状況に不適切な悪ふざけ、身勝手な行動をする
・意欲減退…引きこもり、何もしないなどの状態が続く
・無関心…周囲の出来事に無関心、身だしなみに気を使わない
・逸脱行為…万引などの軽犯罪に当たる行為をしても、それについて説明や反省ができない
・繰り返し行動…散歩や食事、入浴などを決まった時間に行う、やめさせると怒る
・食べ物へのこだわり…毎日同じものしか食べない。際限なく食べる場合も
・言葉の繰り返し…同じ言葉の繰り返しや、他人の言葉をオウム返ししたりする
・好みの変化…食などの好みが大きく変わる。酒やたばこを大量にとるなど
・発語の障害…無口、語彙(ごい)が少なくなる。品物の名前や使い方がわからない
・短期記憶の維持…最近の出来事など短期記憶は保たれる。日時も間違わない

 上記に三つ以上あてはまる場合、前頭側頭型認知症の疑いがあるという。

「たとえば食事などに異常なこだわりを持ち始めます。同じメニューを毎日食べたり、味付けが極端になったり、それを周囲の人に注意されても聞く耳を持ちません。機嫌もコロコロ変わります。ニコニコしていたと思ったら怒ったり、声を荒らげたり、また理屈に合わないことを口走り、行動するようになります。このような症状が続くので、前頭側頭型認知症は家族や周囲との人間関係の崩壊を招くことも少なくありません」

 ブルース・ウィリスの家族はSNSで「残念ながら、コミュニケーションの難しさは、ブルースが直面している病気の症状の一つに過ぎません」とつづっている。とはいえ、いくら行動面での異常があっても、認知機能に大きな変化がみられなければ、認知症と診断することは難しいのだ。