2021年に携帯電話「0円プラン」を発表する楽
天グループの三木谷浩史会長兼社長。このとき、金融子会社の上場は念頭にあったのだろうか2021年に携帯電話「0円プラン」を発表する楽 天グループの三木谷浩史会長兼社長。このとき、金融子会社の上場は念頭にあったのだろうか Photo:JIJI

楽天銀行が4月21日に東京証券取引所プライム市場に株式上場する。金融不安から公開価格は当初の計画から3割程度低くなり、親会社の楽天グループはまさに最悪のタイミングで株式を手放すこととなった。(ダイヤモンド編集部 岡田 悟)

楽天モバイルで作った借金返済のため
金融子会社2社を売り出さざるを得ず

「かなりの資金を楽天モバイルに投入し、金融ビジネスも巨大になっているため、有利子負債が膨らんできた。楽天銀行のIPO(新規株式公開)を進めていきたい」――。

 携帯電話事業の不振で、2022年12月期は3728億円の赤字で4期連続の最終赤字に沈んだ楽天グループ。2月に開かれた決算説明会でグループ“総帥”三木谷浩史会長兼社長は、虎の子の金融子会社2社を上場させる理由をそう説明した。何しろ金融事業を除いた有利子負債は同期末で1兆7607億円にまで膨らんでおり、まさに「借金苦」から抜け出せないのが今の楽天の現状だ。

 台所事情は厳しい。楽天は昨年12月、米S&Pグローバルの格付けが1段階引き下げられて「ダブルB」となり、社債発行や借り入れにこれ以上頼れない。

 三木谷氏は「戦略的業務提携や外部資本の活用も柔軟に検討することで健全なバランスシートを保つ」とも語ったが、提携先はおいそれと見つかるものではない。残された選択肢は、利益の出ている金融子会社2社を売り出すしかないのである。

 さて、子会社上場の第1弾として4月21日に上場するのが楽天銀行だ。同行を1円でも高く売ってキャッシュを確保したい楽天グループだが、クレディ・スイス・グループの経営不安と買収劇、それに米シリコンバレーバンク(SVB)の経営破綻という海外初の金融不安の直撃を受けた。

 果たして楽天グループは、金融子会社2社の上場によって財務の健全性を取り戻せるのか。そして“親”の金策のために荒波に放り出される楽天銀行と、続いて上場に備える楽天証券ホールディングス(HD)の運命やいかに――。