下図は、アエルワールドの売上高の推移を示したものだ。コロナ前である18年の売上高を100として22年までの売上高を指数化し、その推移を描いた。

 これを見ると、大森氏の言葉が数字でも裏付けられていることが分かる。コロナ1年目の20年にも売上高は右肩上がりの成長を継続しており、コロナ3年目の22年には急拡大。18年の売上高と比べると2.4倍強にまで増加した。

なお高い節税効果に時間的な制約
そして「死生観」の変化も

 海外移住に強い逆風が吹いていたとみられる中で、このような結果となったのは一体なぜなのか。その要因は大きく三つある。

 一つ目は、それでもなお海外移住の節税効果の高いことが挙げられる。確かに国税庁による包囲網は厳しさを増すばかりだ。しかし、移住時に税金を漏れなく払っても、税金が安い海外で暮らした方が富裕層にとってはメリットがはるかに大きい。

 大森氏は「富裕層の中には海外移住で税金をゼロにしようとする人がいるが、それは難しい。ただ、『税金を50取られるのはつらいけれど、20くらいで済むならいいよね』という人も多い」と語る。

 一方、ある富裕層は「国税の動きを見て海外移住に二の足を踏むのは、国税庁の目をごまかそうと思っている人」と手厳しい。

 二つ目の要因としては、移住の時期的な制約のある富裕層のニーズが、コロナ禍の中でも底堅かったことが挙げられる。

 例えば、ある年に特に多額の収入があった富裕層は、翌年の1月1日に日本に住所があると日本の住民税が課せられる。だったらこのタイミングで税制メリットが大きい国へ移住をしてしまおう、と考える富裕層は多い。