よく噛んで口の中の乾燥を防ぐ!
唾液が少ないと歯周病に

 唾液には大きく2つあり、それぞれ重要な働きがあります。1つは常時分泌する「安静時唾液」。口内を潤すことで粘膜を保護し、細菌の繁殖を抑えます。もう1つが食事などで分泌される「刺激時唾液」。食べたものと混ざることで味を感じたり、飲み込みやすくすると同時に、アミラーゼという消化酵素が糖質を分解し、消化吸収を助けます。

 これらが唾液の代表的な働きですが、ほかにも多くのメリットを体にもたらします。例えば、唾液に含まれる「ラクトペルオキシダーゼ」という酵素は、発がん性物質をつくる活性酸素を抑える作用があるといわれています。また、唾液の分泌量は自律神経とも関係しており、唾液が十分に分泌されることが自律神経の安定にも繋がります。

 健康な成人が1日に分泌する唾液の量は約1~1.5L。この量より極端に減ると「ドライマウス(口腔乾燥症)」です。ドライマウスになると、細菌が繁殖しやすくなり虫歯や歯周病、口臭の原因にも。細菌が体内に侵入すれば、脳や体に深刻な害を及ぼすことがあります

 ただ、唾液は意外と簡単に増やせます。一番よい方法は「よく噛むこと」。一口30回、1回の食事で1500回噛むのが理想です。「よく話す」といった口まわりの筋肉を動かすことでも唾液腺が刺激され、唾液の分泌を促します。

全てが繋がっていた!
口の中の健康が体の健康に直結する

 歯周病と脂肪肝、糖尿病の関係はすでに説明しましたが、口の中の不調は脂肪肝や糖尿病だけでなく、あらゆる病気のリスクを高める危険性があります。もしも、歯周病菌や虫歯菌が歯茎から血管の中に侵入し、血流にのって全身に運ばれてしまったら……脳を含めた全身に悪影響を及ぼしてしまうかもしれないのです

 歯周病は、心臓病や脳卒中、認知症などの深刻な病気との関連性、高齢者がなりやすい誤嚥(ごえん)性肺炎のリスク、女性は子宮内膜症や早産のリスクが高まると指摘されています。動脈硬化もその1つで、血管に侵入した歯周病菌や虫歯菌が炎症を起こすことで炎症性サイトカインがつくられ、それが血管の壁を厚くして動脈硬化を引き起こす場合があると報告されています。

 代表的な歯周病菌には「ポルフィロモナス・ジンジバリス菌(Pg菌)」、虫歯菌には「ミュータンス菌」があり、どちらも悪玉菌といわれるものです。これまでPg菌のような口内の悪玉菌は、唾液と一緒に飲み込んでも胃酸で死滅すると考えられていました。しかし、近年では、歯茎に加えて消化管から侵入してくるルートが存在することもわかってきました。大量のPg菌を飲み込むと、実際には一部が生き残って、腸まで到達する場合があるので、その悪玉菌が腸内環境を乱し、様々な病気を引き起こすことに繋がると考えられています。