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スマートフォンの理想と現実

「ガラケー再興」待望論は根強くあるものの…
作りたくても作れない、製造サイドの事情とは

クロサカタツヤ [株式会社 企/株式会社TNC 代表]
【第44回】 2013年2月20日
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作れない、作ってくれない

 まず、フィーチャーフォンの開発能力が、先細りの状態にある。特に、フィーチャーフォンの開発が先細る中で、エンジニアが別の業務や分野へ移りつつある。

 もちろん、フィーチャーフォンの「商品企画」を経験した人たちは、現在も日本のメーカーや通信事業者の中でスマートフォンを企画している。従って人材が完全に雲散霧散したわけではない。しかし、基板設計やデバイスの選定、組み込みソフトの開発・チューニングなど、よりハードコアな領域に従事するエンジニアは、必ずしもその限りでない。

 そしてこれは、スマートフォンが市場に台頭しはじめた頃に始まった話でもない。フィーチャーフォンの開発が最も成熟していた、いまから5~6年ほど前くらいから、フィーチャーフォンの生産拠点はすでに中国などに移行していた。その頃から、国内のエンジニアの役割は、仕様の決定や生産委託先の管理になっていたはずだ。

 ならばいっそ、中国メーカーに全面的に丸投げしてしまえばいいではないか――おそらくそう考える向きもあるだろう。しかしこれも容易ならざる話である。

 まず、中国メーカーは、当たり前だが日本企業ではない。従って、日本市場向けの最適化やローカライゼーションは、彼らだけでそうそうできるものではない。世界有数の厳しさと言われる日本の消費者の中でも、あえて「ガラケー」を求める人々である。彼らを満足させる製品を作り出すには、日本企業の積極的な関与が不可欠だ。実際、ガラケー成熟期の末期には、「丸投げ」で開発を進め、失敗した端末も散見された。

 ではきめ細やかな商品企画や製造管理が現在の日本企業にできるのか。各社とも身を削るリストラを進める中、そうしたリソースにはそもそも余裕がない状態だ。その限られた開発リソースの多くは、すでにスマートフォンに振り向けられている。つまり、おいそれとフィーチャーフォンの商品企画を再開できる状態ではない。

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クロサカタツヤ
[株式会社 企(くわだて)代表取締役、慶應義塾大学特任准教授]

1975年生まれ。慶應義塾大学・大学院(政策・メディア研究科)修了後、三菱総合研究所にて情報通信分野のコンサルティングや国内外の政策調査等に従事。その後2007年に独立し、現在は株式会社企(くわだて)代表として、通信・メディア産業の経営戦略立案や資本政策のアドバイザー業務を行う。16年より慶應大学大学院政策・メディア研究科特任准教授。


スマートフォンの理想と現実

2011年はスマートフォンの普及が本格化する年になる…。業界関係者の誰しもがそう予感していた矢先に発生した東日本大震災は、社会におけるケータイの位置づけを大きく変えた。しかし、スマートフォンの生産に影響が及びつつも、通信事業者各社はその普及を引き続き目指し、消費者もまたそれに呼応している。震災を受けて日本社会自体が変わらなければならない時に、スマホを含むケータイはどんな役割を果たしうるのか。ユーザー意識、端末開発、インフラ動向、ビジネスモデル等、様々な観点からその可能性と課題に迫る。

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