人口4000万人減に見合ったインフラにする

 今、日本は1億2000万人という人口規模に見合う形でさまざまな社会インフラが全土に張り巡らされている。山奥の過疎地にまで電気が通り、郵便まで届けられている。集落から離れた「ポツンと一軒家」が火事になっても、119番すれば、消防隊がやってくる。山の麓にある集落に、地震で土砂崩れが起きれば、自衛隊がやってきて救助をする。

「そんなの当たり前だろ」と思うかもしれないが、これから日本ではそれが難しくなる。

 当たり前だ。1億2000万人用の社会インフラで、人口が4000万人減れば当然、これまでのインフラの維持はできない。

 労働者がすさまじいスピードで減っていくので、郵便も届けられないし、壊れた電柱も修理されない。公共サービスも然りで、消防団や自衛隊は近年、深刻な人手不足に直面しており、入隊希望者の年齢を引き上げるなどでどうにか対応をしている有様だ。

 では、どうするのか。答えは簡単で、1億2000万人用に全国に広げたインフラを徐々に畳んで、8000万人規模に見合うインフラにへと縮小していくのである。

 といっても、人間というのは一度得た豊かさを手放すことは難しい。ネットでポチッとやったものは早く届いてほしいし、家の近くに郵便局があってほしいし、停電しても数時間で復旧してほしいし、110番をしたらすぐに警察に駆けつけてもらいたい。

 だから、インフラの「質」をキープしたまま縮小するとなると、範囲を狭めていくしかない。つまり、地域内に人を集中的に住まわせて、限られた社会インフラを効率的に回すようにするのだ。

 例えば、今の医療や介護がわかりやすい。現在、医療や介護にあたる人々は、地域内に散らばって生活している高齢者一人ひとりをケアするために、自分たちも分散するか、訪問介護のような形で拠点を点々としているので、この移動だけでも時間と体力を浪費している。しかし、もし地域内の高齢者がすべて一つのエリアに集まって生活をしてくれればどうだろう。医療や介護の人々はその場所に集まって、ケアをするので非常に効率的なので、個々の負担はかなり軽減される。