すぐ賞賛につながらないことはやらない人たち
彼はこう答えた。
「別に矛盾してないですよ。彼らは仕事するのが好きなのではなく、“すごい”と言ってもらうのが好きな人たちなので」
なるほど、と思った。
確かにそう考えると、辻褄があう。
「責任感の欠如」も「主体性のなさ」も、「すぐに「称賛」につながらないことはやらない」からであって、彼らの中では合理的な選択なのだ。
何を好き好んで、大した見返りもない、面倒な仕事をせねばならないのか。
当然やらない。
回答が遅いひとをつっついて、わざわざ回答をもらうか?
仕事を増やすより、相手のせいにしたほうが楽ではないか。
必要そうだけど、お客さんから言われていない仕事をするか?
言われるまでやらないのが、得策だ。
意識が高いだけで仕事ができない人たちは、万事が「すぐリターンがあるかどうか」で判断するので、積み上げを必要とする仕事と非常に相性が悪いのだ。
なぜならほとんどの仕事は、「その場でのインスタントなリターン」というよりは、長期的な信用とスキルの獲得が求められるからだ。
それが“学生やアマチュア”と“プロ”の意識の違いとも言える。
うなぎ職人の世界には「串打ち3年、裂き8年、焼き一生」という言葉があり、優れた職人ほど「私なんか、まだまだです」という謙虚な方がたくさんいる。
同様に、私はこれまで数多のコンサルタントと出会ってきたが、世の中のコンサルタントに対する「意識高そう」というイメージとは裏腹に、優秀なコンサルタントであるほど「謙虚な人」は、実は非常に多かった。
エンジニアたちにも、一種そういう文化があり、「意識だけ高い」やつが嫌われるのではないかと思った。
「意識だけ高い」のは学生ならまだしも、社会に出たら通用しないのだ。
ティネクト株式会社 代表取締役
1975年生まれ。筑波大学大学院環境科学研究科修了後、理系研究職の道を諦め、給料が少し高いという理由でデロイト トーマツ コンサルティング(現アビームコンサルティング)に入社。品質マネジメント、人事などの分野でコンサルティングに従事し、その後、監査法人トーマツの中小企業向けコンサルティング部門の立ち上げに参画。大阪支社長、東京支社長を歴任したのちに独立。現在はマーケティング会社「ティネクト株式会社」の経営者として、コンサルティング、webメディアの運営支援、記事執筆などを行う。また、個人ブログとして始めた「Books&Apps」が“本質的でためになる”と話題になり、今では累計1億2000万PVを誇る知る人ぞ知るビジネスメディアに。Twitter:@Books_Apps