ほぼ全ての分野で半導体の需要が減少
足元、メモリ、ロジック、アナログなど、ほとんど全ての分野で半導体の需要が減少している。2022年後半以降、世界の半導体市況では、まずメモリ半導体の価格が下落し始めた。
台湾の調査会社トレンドフォース(Trend Force)によると、23年1~3月期のDRAM価格は平均して20%程度下落した。その結果、23年1~3月期、サムスン電子の半導体部門の営業損益は4兆5800億ウォン(約4600億円)の赤字に陥った。営業損益の赤字転落は14年ぶりだ。サムスン電子は減産を余儀なくされるほど需要は減少している。
ロジック半導体の需要も減少し始めた。22年10~12月期までファウンドリー最大手、台湾積体電路製造(TSMC)の純利益は増加基調だった。TSMCは、アップルやAMD、エヌビディアなどのIT先端企業や世界の自動車メーカーの需要に応じて生産を行う。そのため、他社に比べると在庫の増加リスクには対応しやすかった。
しかし、23年1~3月期、TSMCの増益ペースは前年同期比で2%にとどまった。顧客企業は最終需要の減少に対応するために発注を絞り始めた。
パソコン向けを中心に、プロセッサーなどを生産する米インテルの業況はさらに厳しい。1~3月期、インテルの売上高は前年同期比36%減の117億1500万ドル(1ドル=136円換算で約1兆6000億円)、最終損益は27億5800万ドル(約3800億円)の赤字だった。
その要因の一つに、利益率の高い最先端チップの製造体制を確立できなかったことは大きい。16年頃、インテルは回路線幅10ナノメートル(ナノは10億分の1)の製造ライン立ち上げに失敗した。その後、同社は旧世代の製造ラインを用いて生産されるチップの演算処理能力の向上に取り組みつつ、最先端の製品面ではTSMCに依存した。
さらに、産業分野でのIoT技術の導入や、車載用の画像処理センサーなどの需要が拡大してきたアナログ半導体の分野でも、事業環境は悪化し始めた。この分野の大手である米テキサス・インスツルメンツは4~6月期の一株利益予想を下方修正している。