当面、半導体市況は一段と悪化する懸念

 今後、半導体の市況はさらに悪化しそうだ。特に、スマホ需要の飽和は大きい。米国の調査会社IDCは、23年の世界のスマホ出荷台数が前年から1.1%減少すると予想する。スマホはコモディティー化している。また、パソコン需要も落ち込みが鮮明だ。

 それに加えて、IT先端企業のビジネスモデルも行き詰まっている。SNSやサブスクリプション(継続課金制度)の分野で競争が激化し、成長は以前に比べると鈍化した。また、マイクロソフトのように、人工知能(AI)によって検索や広告などの需要を喚起する動きはあるものの、AI利用が世界各国で支持を得ているとは言い難い。新しいビジネスモデルが確立されるにはまだ時間がかかるだろう。

 さらに、世界的に設備投資が絞られていることも、目先の半導体需要を下押しする。主要国経済の中でも相対的に底堅さを保ってきた米国でさえ、3月の米耐久財受注統計によると、国内総生産(GDP)の算出に使用されるコア資本財の出荷が減少した。

 アジア新興国地域では、中国のスマホ需要の減少、個人消費の停滞などを背景に、4月も韓国の輸出が減少した。半導体は前年同月比41.0%減だった。世界のITデバイスなどの製造拠点としての地位を高めてきた台湾では、鴻海(ホンハイ)精密工業やパソコン受託生産企業のコンパルなどの業績が急速に悪化している。一部で不足感は残ってはいるが、車載用半導体の需給ひっ迫も徐々に解消されている。

 マクロ経済面でも、当面、米FRBや欧州中央銀行(ECB)は金融引き締めを続けるだろう。それに伴い、米国の一部中堅銀行の経営不安や、米欧の商業用不動産の価格下落リスクは高まりそうだ。米国などで家計や企業の利払い負担は増加し、個人消費や設備投資は一段と圧迫されるだろう。世界の半導体市況の底入れには時間がかかりそうだ。